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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.6 ■■■

紅丸葉の草本

そこそこ情報が提供されていても、どんな植物かわからない場合も少なくない。
そんな例。・・・

紅草,山戎之北有草,
莖長一丈,葉如車輪,色如朝虹。
齊桓時,山戎獻其種,乃植於庭,以表霸者之瑞。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

本草での紅草とは、水辺に生える大蓼あるいは馬蓼。しかし、今村注記では、植物について全く触れていない。コレは、同定難しだから、簡単に考えるナ、とのご注意だろう。

そうなると、先ずは、"車輪"のような葉がある草という点に注目することになる。
牛車の形象的な話なのか、比喩的に法輪を指すのか、よくわからないが、とりあえずは名称を探って、こんな草々を眺めてみることになろう。
  麻 or 車輪草/以智比[イチビ]/Velvetleaf
  ェ葉車前/西洋大葉子/Greater Plantain
  車葉草/〃[クルマバソウ]/Sweet woodruff
  麻葉風輪菜/車花[クルマバナ:塔花の1種]/-
変種はあるにしても、いずれも紅色とは無縁な感じがする。

一方、これぞ"紅葉"との印象を与える草は東アジア外からの渡来種の大戟/燈臺草類である。しかしながら、こちらは、丸葉からはほど遠い。
  一品紅/ポインセチア/Ppoinsettia@メキシコ〜中央アメリカ
  紅桑 or 紅葉鐵/-/Copperleaf@熱帯アメリカ

渡来種で、車輪葉の観点で結構イイ線いっているのはこれ位か。
  血桐/大葉木/Elephant's Ear@旧大陸熱帯

要するに、丸葉的な印象を与えるまあまあの大きさの草とは[ヒユ]類の植物ということになりそう。それなら、東アジアにも色々あろう。
ただ、"紅"で知られるで有名なのは新大陸の種だらけとくる。
  紅葉 or 血/-/Bloodleaf[Iresine]@熱帯アメリカ
  大葉紅草/-/Ruliginosa@ブラジル,西インド諸島
旧大陸にも赤くなる種はあるようだが、南の植物である。葉が赤くてかまわないのだから、熱帯性なのは当たり前か。
  (白花)/Desert cotton[Aerva]@アフリカ,南西〜南アジア

ま、このような展開になってしまうので、素人が推定するのは結構骨である。ただ、この辺りの単語が商業的に余り使われていないので、検索結果は有象無象のサイトが99%という状況ではないから、手間といってもたかが知れている。

ここで諦めるのもナンなので、もう一歩進めてみることになる。

産地の話も考えてみよう。

山戎とは、春秋時代、河北北部地域に存在した遊牧民。B.C.664年、齊の桓公は燕救援で山戎を討伐。この事績を示唆した記述になっている。

要するに、この草は"霸者之瑞"ということで注目されたと、わざわざ書いているのである。
そうなると、単なる類は該当しそうにない。そのような派手さを欠く種としか思えないからだ。

ただ、広義で考えてみると、そうも言えない。

車を引く牛の尾になるよりは鶏頭の方がましという言葉があるからだ。・・・
蝦鉗菜/蔓野鶏頭[ツルノゲイトウ]/Joyweeds】の類。
  ・大葉紅草/-/"Purple Knight"
  ・紅草五色/-/-
前者の英語通称名にはいかにも"霸者之瑞"の観あり。
後者の名前は、大陸での五色虹にピッタリの命名。朝虹との表現はコレかも。
どちらも、山戎の本拠地に生えていてもおかしくはない種だし。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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