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☀ 📖■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.11 ■■■
獅子
「卷十六 廣動植之一 毛篇」はライオンから始まる。・・・【師子】，
釋氏書言，師子筋為弦，鼓之衆弦皆絶。
西域有黑師子、捧師子。
集賢校理張希復言，舊有師子尾拂，夏月，蠅蚋不敢集其上。
舊説蘇合香，師子糞也。
アショカ王が仏塔を作った頃、獅子像も設置されたようで、仏教にとっては重要な獣だったのは間違いない。
だからこその、蘇合香/Styrax話。
重病のアショカ王が服用して治癒したと言われる薬だからだ。中天竺産で、西域経由の渡来なので、獅子の糞と綽名がついたのだと思われる。もちろん樹脂である。
陳敬:「香譜」によれば、・・・
《神農本草》云：“生中臺川谷。”
陶隱居云：
“俗傳是師子糞，外國説不爾。
今皆從西域來。真者難別。
紫赤色如紫檀堅實，極芬香，重如石，燒之灰白者佳。
主辟邪、瘧、癇、疰，去三蟲。”
この、蘇合香だが、音楽曲名でもある。治癒した喜びを表現したもの。"師子筋為弦"とは、それを言っているのだと思われる。そんな音楽が流れているのに、他の曲をひくような楽器はたちどころに音を失うということで。
そして、唐突に、黒色のライオンの存在が語られるが、これも同様なお話ということだろう。
しかし、それは見込み違いである。
天竺のライオンは草原棲息種だから、黒くなることはあり得まい。しかし、マグレブに棲息していた絶滅種Barbary lion or Nubian lionは、森林棲息種なのである。実際、腹部は黒褐色だったらしい。通称、黒い鬣だったようだが、そこまでいかなくても、濃褐色であったのは確か。
但し、そんな種が西域に棲息している筈はない。
ただ、魏武帝がライオンの子供を捕まえる話があるから、飼われている黒ライオンの話がソグドにも伝わっていたと思われる。しかし、ソリャ作り話だと見るソグド人もいたということ。
蠅の話は、さらなる唐突感があるが、ライオンをじっくり観察したことがあったからこその一行。草原のライオンには蠅がたかっているもの。蠅と呼ぶよりは蚋[ブヨ]に近く、血を吸う種である。それを追い払うため、尾の先が払子のようになっていると見ていたのであろう。従って、虎の尾製払子は、蠅蚋払いに最適という俗説が横行することになろう。実際は、そのような高価な用具を見せたいがため以上ではなかろうが。
「獅子身中の虫」についても、面白話を書いて欲しいところだが、流石にそれは止めたようだ。
佛子，菩薩起信出家修行，若仍貪圖名聞利養，於王官前説佛戒時，捆縛僧尼、受戒菩薩，如待囚犯，似虐戰俘。彼猶獅子身中之蟲，自食獅肉非餘外蟲。
[「大梵網經菩薩戒本」四十八(伝 鳩摩羅什 訳)]
そうそう、「獅子奮迅」は仏典とされるが、哮吼奮迅にもかかわらず、殺される話もあることを知った。中国版アショカ王の逸話なのだが。・・・
魏武帝伐冒頓，經白狼山，逢獅子，使人格之。殺傷甚衆。王乃自率常從健兒數百人撃之。獅子哮吼奮迅，左右咸驚汗。忽見一物從林中出，如狸，超上王車軛上。獅子將至，此獸便跳于獅子頭上，獅子即伏不敢起。於是遂殺之，得獅子一子。此獸還。未至洛陽三十里。路中鶏狗皆伏。無鳴吠者。出《博物志》
後魏，波斯國獻獅子，永安末。始達京師。莊帝謂侍中李或曰。朕聞虎見獅子必伏，可覓試之。於是詔近山郡縣，捕虎以送。鞏縣山陽並送二虎一豹，見獅子，悉皆瞑目，不敢仰視。園中素有一盲熊，性甚馴善，帝令取試之。虞人牽盲熊至，聞獅子氣，驚怖跳踉，曳鎖而走。帝大笑。出《伽藍記》
[「太平廣記」畜獸八]
(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.
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