表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.31 ■■■ 食人鼠亀の尾は、長く伸びていて、表面が鱗状。そんな体裁の10cm程度の尾を持っていて、樹上棲の動物の話が収載されている。 これだけなら、どうということはないが、ビックリさせられるのは「食人」食性ありとされている点。 普通は、肉食獣は毛者。亀のような尾になることはない。・・・ 木僕,尾若龜,長數寸,居木上,食人。 [卷四 境異] 尾から考えて、ありえそうなのは鼠である。 アジアには棲んでいないが、大型の非洲巨鼠/アフリカ鬼鼠/Giant pouched ratがヒトの赤ん坊を食べたとのニュースが流れたことがあるし。 鼠は腸の構造から見て草食動物として生きてはいけないだろう。そのため蛋白質を堅果や穀類から摂取する必要に迫られる。しかし、それらが欠乏する時期もあるから、動物性蛋白質も摂取せざるを得ない。一般には、食虫に精を出すと言われているが、獣肉は食べないとの証拠がある訳ではない。獣に喰われる側とされているから、有り得まいとなっているに過ぎない。 そこで、小生は、条件によっては、"食人"があってもおかしくはないと見る。 そう思うのは、樹上棲であれば、立派な毛皮の尾を持つ栗鼠[リス]の敏捷性には勝てないから。 堅果類の取り合いでは絶対劣位。おそらく、餌のえり好みをする余裕はないだろう。 しかし、食人できそうな大型の樹上棲鼠がはたして存在するのかと言われると、答えに窮する。 ただ、夜行性ではあるが、アジアの常緑広葉樹林帯には全長30cmを越え、重量級だと700g以上という大きな樹上棲鼠が棲んでいることは確かである。日本の天然記念物 琉球鼠/毛長鼠/Ryukyu long-furred ratがいるからだ。四肢に鉤状の爪があるから、野原や田畑には出没せず、もっぱら登木生活をしているのは間違いない。(但し、尾も体毛で被われており、鱗状ではない。) 残念なことに、滅多に見かけない絶滅危惧種であり、その生態はほとんど知られていない。 当然ながら、類縁の種が大陸にも棲息している筈だが、そちらの情報もほとんど見かけない。 これだけの大きさがあれば、跳びかかれば食人も可能と見るが、どうだろうか。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |