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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.2.2 ■■■

刺絡

「卷五 怪術」に収載されている、それほどの驚きでもない話。・・・

元和末,監城力張儼,遞牒入京。
至宋州,遇一人,因求為伴。
其入朝宿鄭州,因謂張曰:
 “君受我料理,可倍行數百。”
乃掘二小坑,深五六寸,
  令張背立,垂足坑口,針其兩足。
張初不知痛,又自膝下至,再三之,K血滿坑中。
張大覺舉足輕捷,才午至
復要於陜州宿,張辭力不能。
又曰:
 “君可暫卸膝蓋骨,且無所苦,當日行八百裏。”
張懼,辭之。其人亦不強,乃曰:
 “我有事,須暮及陜。”
遂去,行如飛,頃刻不見。


"脚力とは"傳遞文書を仕事とする人で、日本語では飛脚に当たる。文書を書き記した薄い木札[牒]を長安に運んでいた時のこと。

場所は、黄河の南側「豫」[河南]の古都群。以下のように東から西へ連なっている。
 宋州@河南商丘
 │
 @河南開封
 │
 鄭州@河南[省都]
 │
 洛陽@河南
 │
 陜州@河南三門峡
 │
 商州@峡西商洛
 │
 長安@峡西
飛脚といえども大変な道のりである。ここを縦横無尽に駆け抜けたりすれば、足にガタがきておかしくない。しかし、そのような生活を強いられる職業。そんな人々のための鍼灸医がいたようである。

ここで紹介されている治療は"刺絡"だと思われる。漢方には血という概念があり、それに対応したもの。現代でも民間療法として続いているという。おそらく、局所的微出血による壺的刺激と視覚的インパクトで効いた感じを与えるのであろう。従って、それが大いなるプラスになる人もいれば、マイナスになる人もいよう。
ただ、唐代は、出血量も多そう。西洋の瀉血に近い印象。

技量のほどはわからぬが、膝の骨の手術も手掛けていたようだ。
膝蓋骨[膝小僧]はお皿型の骨で、上部は強大な大腿四頭筋に繋芸、下端は人体で脛骨前面上部と繋がる。当たり処が悪い骨の一部を削ってしまうということか。
飛脚は、手術を断ったが、賢明な判断と言えよう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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