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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.2.21 ■■■

四言両句釈詩[3:象坑と象跡]

象宝から始まり、象と対比しての猊と駝と来た、四言両句の連句だが、次の句は難解。
何の坑や跡なのかさっぱりわからぬからだ。・・・

  坑中無底,
  跡中無勝
(文上人)  [續集卷五 寺塔記上]

今村注記は流石。
これらすべては象の説話だというのである。

成程。・・・
復次目連。
過去久遠雪山王邊有五百群象。
於中有一大象王為主。
體貌可愛大力有智。
時是象群宿出在山嶮隘難之處。
唯有一道。
爾時獵師見此象群。
即夜於嶮道中大作坑
作是念。此諸群象當墮此中。
得屬於我隨我所取。
夜作坑已驅逐群象向嶮道坑。
群象欲出見有大坑不能得過。
目連。
時象群主以身在坑上為橋。
使五百群象於脊上過。
群象過已作勢踊跳。
爾時山神。説是偈言。
  惡人作深坑  中有智象王
  度彼亦自度  唐勞作深坑
  [「大宝積經」卷第七十九]
久遠の過去話。
雪山の王の辺りに、500にも達する象の群れがいた。
そのなかの一頭、大象王が群れの主となっていた。
身体も容貌も可愛いく、力が強く、知恵もあった。
時折、この象の一群が棲家を出ることがあったが、
そこは険しい山で狭隘な場所で難儀する場所。
一本道しかなかった。
そんなこともあって、獵師が、この象の群れを見かけた。
すかさず、夜のうちに険しい道に大きな穴を作った。
上手くいくよう念じながら作ったのである。
つまり、象の群れが、この穴に落ち込むことを狙った訳だ。
象の群れは、出かけてきたが、その大きな穴を見つけてしまった。
これではとても通過できない。
すると、その時、主である象が穴の上に身体を横たえ、
皆のために橋となった。
そして、500もの象を、背骨の上を通過させたのである。
穴を通り過ぎると、群れの象達は飛び跳ねて踊るようにして
勢いよく去っていった。
と言うことで、その時に、山神がおり、"偈"を作った。
  悪人、深き穴を作る。
  中に、知恵ある象王あり。
  皆を渡し、自分も渡った。
  深い穴も、無駄骨に終わった。


一方、象跡の方は、もともと、そんな経典があり、成式の時代、比喩話はよく知られていたであろう。・・・
猶諸獸跡,彼一切悉入象跡中,象跡盡攝,彼象跡者為最第一,謂廣大故。---
---如是若有諸衆生,無足、二足、四足、多足,色、無色、有想、無想,乃至非有想非無想,如來於彼為極第一,為大為上,為最為勝,為尊為妙。
  [「中阿含経」卷第三十四(一四一)大品喩經第二十五]

世尊所説法善,如來弟子聖衆善趣。梵志!譬善象師遊無事處,於樹林間見大象跡,見已,必信彼象極大而有此跡。---  [「中阿含経」卷第三十六(一四六)梵志品象跡喩経第五]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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