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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.3.7 ■■■

身中神々瞑想法

五臟六腑が陰陽五行的な概念であることは耳にしてはいたが、細かいことは知らなかった。
【五臟】
  心[火]、肝[木]、脾[土]、肺[金]、腎[水]
【六腑】・・・経絡の陽
  膽[=胆]、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦。
【三焦】・・・六腑のうちリンパ節
  上焦、中焦、下焦
上焦如霧,中焦如,下焦如[「靈樞」營衛生會]
三焦者,決之官,水道出焉。[「素問」靈蘭秘典]

九竅百骨も耳にしたことがある程度。
【九竅】・・・ヒトの身体の穴
  口[脾竅]、両眼[肝竅]、両耳[腎竅]、両鼻孔[肺竅]
  尿道口[前陰]、肛門[後陰]
生殖器官は臓や竅から排除されているのが特徴である。

それと、骨は沢山の100ではなく、360が正統のようだ。
【三百六十骨節】
乃得五臟清涼,六腑調泰,三百六十骨節之間,有諸滯礙,十惡之業,百八十煩惱之業,衆苦罪源,[「元始天尊説生天得道真經」]

そうそう、この語彙もあった。道教的な見方をする人はまずいないとは思うが。
【五體】
  筋、脈、肉、骨、皮
仏教であれば、頭と両手両足となる訳だ。日本は仏教国でありコチラ。

そんな浅学のレベルだと、「巻二 玉格」を読むのはえらく辛い。・・・

五藏,九宮,十二室,四支,五體,三焦,九竅,
 百八十機關,三百六十骨節,
  三萬六千神隨其所而居之。
魂以精為根,魄以目為戸。
三魂可拘,七魄可制。


というのは、例えばこういうことだからだ。
【九宮】・・・九宮真人
  心為絳宮真人;腎為丹元宮真人;肝為蘭台宮真人;肺為尚書宮真人;脾為黄庭宮真人;膽為天靈宮真人;大腸為永靈宮真人;小腸為元靈宮真人;膀胱為身房宮真人
  or
  雙丹宮真人、明堂宮真人、丹田宮真人、泥丸宮真人、流珠宮真人、大帝宮真人、天庭宮真人、極真宮真人、大皇宮真人

   [「黄庭經」]
ほとんど、ナニガナニヤラである。

こうなると、成式は一体なにを考えてこんな用語を並べているのだと、多少、腹立たしい気分になったりする。
しかし、それは、読者の知的レベルが低すぎることを意味するのである。

これは身中の神々を瞑想する道教の術の1つ、平坐存想法の話だからだ。・・・
一身鼓運體節上下内外更不妄想
平坐一心朝念觀相
   [王契真:「上清靈寶大法」巻四]

つまり、成式が引いている文章とは次のような内容なのである。・・・
謹んで臣某の身中五体の
 眞官・五臓六腑七政九宮十二神室 、
 四肢五体の筋骨脳髄皮膚血脉九竅、
 栄衛一百八十霊関、
 三百六十骨節、
 千二百形影、
 万二千精光、
 左三魂右七魂、
 三部八景二十四神、
身中三万六千人神を集む。

[「玉清天極総真文昌大洞仙経」巻二第十二@宮澤正順:「道教における瞑想について」印度學佛教學研究第五十三巻第一号 平成十六年十二月]

ついでながら、「七政、九宮、三田,十二神室」「四肢八脈,五臟六腑」は"西龜之山,一曰龍山"での梵行に付随する概念のようである。[「上清靈寶大法」巻四]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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