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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.3.12 ■■■

北斗七星神

柄杓型に星が並ぶ北斗七星は北極星の周りを1年で360度回る。名称としては、こうなる。
 1〜7全体・・・【斗】
 先端星・・・【魁星】
 1〜4の水を汲む部分・・・
【魁星】兼名
 5〜7の柄の部分・・・【杓】

勿論、各星に名称がふられているが、「酉陽雜俎」ではほとんど見かけない語彙がもちいられている。・・・

 北斗,魁,
 第一星 神名 執陰,
 第二星曰:葉詣,
 第三星曰:視金,
 第四星曰:拒理,
 第五星曰:防作,
 第六星曰:開寶,
 第七星曰:招搖。
  [卷十四 諾皋記上]

一般的には、「史記」天官書の"宮"名称に密教の星君名称を組にした神名があてられる。道教的には、第八/九星[<洞明星/輔星>, <隱元星/弼星>]も加わた星名になるようだが。 [《黄老經》@「雲笈七籤」日月星辰部]
以下の通り。・・・

第一星・・・【天樞】【貪狼】星君 <陽明星> 【執陰】@酉陽雜俎
第二星・・・【天【巨門】星君 <陰精星> 【葉詣】@酉陽雜俎
第三星・・・【天【禄存】星君 <真人星> 【視金】@酉陽雜俎
第四星・・・【天權】【文曲】星君 <玄冥星> 【拒理】@酉陽雜俎
第五星・・・【玉衝】【廉貞】星君 <丹元星> 【防作】@酉陽雜俎
第六星・・・【開陽】【武曲】星君 <北極星> 【開寶】@酉陽雜俎
第七星・・・【揺光】【破軍】星君 <天關星> 【招搖】@酉陽雜俎

なんと言っても有名なのは"魁"。
「魁=鬼+斗」なので、左足で北斗を後に蹴りあげる鬼と解釈されたりもするが、普通は、科挙合格主席を象徴する星とされている。(二十八宿の首の奎とされている場合も見かける。)

北極星に従い、それを支える最重要な役割ということで、科挙及第主席の意味付けが行われたからであろう。当然ながら、文章や簿を司る神とされ、道教の学問神"文昌帝君"の兼祀。鬼としては、左足の反対にある右手を振りあげ、科挙及第者名を書くための筆を握らされることになる。なかなかに面白い嗜好といえよう。

さて、成式が異端と見た名前の方だが、出典は、隋 蕭吉:「五行大義」卷第五 第二十 論諸神(大陸に残存せず, 日本に伝存の書.)が引く《春秋佐助期》か。・・・

孔子元辰云,
 北斗第一~,字希~子,
 第二~,字貞文子,
 第三~,字祿存子,
 第四~,字世惠子,
 第五~,字衞不鄰子,
 第六~,字微惠子,
 第七~,字大景子。
此亦竝稱子也。

春秋佐助期云,
 第一星~名執陰,姓頸梁,
 第二星~名斗諒,姓伊當,
 第三星~名拒理,姓英領許,
 第四星~名豫章,---,
 第五星~名防,姓鷄尹堵,
 第六星~名開寶,姓蚩,一名蒼兒部,
 第七星~名招,姓肥脱絡馮。
七星之名,竝是人年命之所屬,恆思誦之,以求v轣B


星占では、北宮玄武七宿[斗, 牛, 女, 虚, 危, 室, 壁]も重視されていたようだし、様々な占手法があったのは間違いない。当然ながら、北斗七星の名称も違ってくるだろう。
官僚制度下では標準形式と網羅性が重視されるから、ご都合主義的な統一が図られることになるだけのこと。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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