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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.1 ■■■

副葬品類

副葬品類について記載されているので、見ておこう。・・・

銘旌出門,衆人裂將去。

一般的には、旗や布裂を風にははためかせると、そこには霊がついてきて、辟邪の効果ありとされている。
従って、葬列の先頭には旗が立つことになる。死霊が憑依するのだから、不可欠とされた筈である。当然ながら、そこには死者の姓名と官位が重々しく記載されることになろう。そうなれば、一種の位牌的なものでもあったろうから、最重要な葬儀用品と言ってもよさそう。・・・
 大喪,共銘旌,建車之旌。 [「周禮」春官宗伯 司常]

道教だと官僚的葬儀様式を徹底するだろうから、かなり細かい情報を書いていたと思われる。

その旗は、死出の旅路でも通用するように、墓に安置した棺に被せ、その後に埋めるのが礼であろう。おそらく、要人の場合はその旗に帝のなんらかのお印しがあってしかるべし。

そのように大切に扱われるべき旗を、行列が登場した途端に、人々が裂いて取り去ってしまうのは合点がいかない風習である。
酷い目に合わせた恨みをはらすべく、輩の霊に仕返しはありえるが、そのようなことが簡単にできる訳もないから、形見として頂戴しようということかも知れぬ。切れ端がお守り(チャーム)にされるのだろう。

亡者には、光モノの副葬品は厳禁の風習も古くからあったような書きぶりだが、日本列島では銅鏡は垂涎の的の副葬品だった筈だから、違和感を覚える。・・・

送亡人不可送韋革、鐵物及銅磨鏡蓋,
言死者不可使見明也。
董言,
 “《禮》:
  ‘弁服。’此用韋也。”


尚、韋革は、主に鹿だが鞣(なめし)皮製品。甲冑類かも。艶が出ており光沢が目立つ。

ただ、輝かない鏡は入れるのかも。・・・

送亡者不鏡蓋。

は鏡入れの小箱らしい。蓋なしでということだから、剥き出しの鏡は入れるべしということのように見える。

その他の副葬品。・・・

送亡者又以
黄卷、錢、菟毫、弩機、紙疏、掛樹之屬。
又作𨎍車。車,古也,似屏。


黄巻・・・黄檗で染めた(虫喰い除け)書籍。
銭・・・で作った硬貨擬。
  紙銭は燃やす場合のみということのようだ。
菟毫・・・当時の筆。(現在の白毛は羊が多い.)
  紫毫筆,尖如錐兮利如刀。[白居易:「新樂府 紫毫筆」]
弩機・・・石弓機器。[青銅製で角材に取り付ける.]
   東京国立博物館所蔵品@110年
紙疏・・・写疏用紙では。
掛樹・・・何かを掛けるための樹木か。
  書を下げる訳ではなかろうから、狩の獲物掛けだろう。
𨎍車・・・本来は人/荷を載せる箱状の車。
  "送亡者之紙簍也。"@「正字通」とのこと。
  要するに紙屑[廃紙][簍]か。
  古は辟邪用乾燥草か。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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