表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.3 ■■■ 床下鬼手人気ある怪奇話が収録されている。なんといっても、主人公がどのような人物か、なにも描かれていない点が秀逸。イヤー、この妖怪、なんだろうネと盛り上がれるからである。 但し、それなりに、有名な寺院も揃っている揚子江下流域の風土を考えながら読むとよい。・・・ 永泰初,有王生者,住在揚州孝感寺北。 夏月被酒,手垂於床。 其妻恐風射,將舉之。 忽有巨手出於床前,牽王臂墜床,身漸入地。 其妻與奴婢共曳之,不禁地如裂状,初余衣帶,頃亦不見。 其家並力掘之,深二丈許,得枯骸一具,已如數百年者,竟不知何怪。 [卷十三 屍穸] 766年のこと。 楊州にある孝感寺の北側に在住していた王生におきた話。 夏の夜である。 酔っ払って寝てしまい、手をダラリと寝床の外側に垂らしたままだった。 妻は、そのままだと風邪に当たりかねないと恐れて、王生の手を戻そうとした。 すると、将にその時、突然に、寝床の前から巨大な手が出現。 王生の手をつかみその身体を地面に引きずりおとしたのである。さらに、暫時、体躯は地中へと入りこんでいった。 妻は奴婢と力を合わせ、引き込まれないように曳いたのだが、まるで地面に裂け目が生じたかのようで、それを止めることはできなかった。 初めは、着衣や帯が残ってはいたのだが、かれこれするうちに、すべて見えなくなってしまった。 ということで、家の者達が、力まかせに地面を掘り起こしてみた。深さ2丈もいっただろうか、いかにも古そうな一体の骸骨が出て来た。皆、これは数百年前のものと。 結局のところ、どんな妖怪なのかは分からず仕舞い。 要するに、事実としては、3ツ。 家の主人である王生が行方不明になった。 敷地内で古い骸骨が出土した。 家の人達は、妻を含め、皆揃って、 妖怪が主人を地中に引きずりこんだと証言。 灰色の脳細胞なら、王生の身になにがおきたかはすぐにわかる。 ただ、この主人が家でどのような振舞いを見せていたかの情報は得られないから、原因自体は解明できぬままに終わるが。 おそらく、この事件は、お寺のお墨付きで特段の探索無し。 僧侶が厄払いした上で、遺体なき葬儀をとりしきったことであろう。なかなか味な処断と言えよう。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |