表紙
目次

📖
■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.12 ■■■

酉陽雑俎的に山海経を読む

--- 東山経 ---

<東山経>は山東の4山系46山が対象。(一部、江蘇)

南⇒西⇒北を俯瞰的に眺めると明らかな風土的違いがあった。
 @江西〜浙江は鳥(鳳凰)信仰[→]
 西@峡西〜甘粛(河西回廊から中原)は牛馬羊信仰[→]
 @山西〜河北は主にシャーマン的蛇信仰[→]

推定にすぎぬが、これだけの情報でも、状況はかなり見えてくる。・・・

人面鳥身やその逆が神ということになれば、神官が鳥冠鳥面、あるいは翼装束を着け、盛大な部族祭祀をとりおこなったということであろう。飛揚イメージの舞踏と、鳴き声的な歌謡も組み込まれたに違いあるまい。祭祀はまさに興奮の坩堝であり、それを生み出せるスキルを持つ特別な神官族がいたに違いない。

一方、家畜信仰の核は生贄儀式ではなかろうか。おそらく、できる限りの贅を尽くすことこそが、部族繁栄の決め手とされたであろう。
家畜の力を凌駕する強靭な身体能力とマネジメント能力を兼ね備えた優れた首領が祭祀をとりしきったのであろう。

蛇的シャーマン信仰はこれらとはかなり違う風土にならざるをえまい。祭祀とは、あくまでも再生の儀式だからだ。シャーマンは仮死状態となり、異界で蛇神と交流し、再び現生に現れるのだから。祈願をかなえてもらえ、重要なご宣託を頂戴できるかは、ひとえにシャーマンの能力にかかっており、それができないということは神に嫌われた訳であるから殺されることになろう。

さて、そこで東である。
表面的には、他の地域の信仰の混合的様相を示している。
尚、山系1には、山東中部山地の泰山(玉皇頂:1,545mHigh)-魯山/沂山-蒙山辺りが含まれているようだ。・・・

■1 山神は龍首人身
 ▲𧑤之山[=首] 梨牛的・・・鳴音
 ▲活師[=蛤蟆兒「集解」]
 ▲状之山的獣從從・・・六足自
   ・・・鼠毛
   ・・・箴喙
 ▲勃之山
 ▲番條之山
 ▲姑兒之山
 ▲高氏之山 ▲嶽山
 ▲犲山
   夸父的獣・・・毛呼音
 ▲獨山黄蛇的𧌁・・・魚翼出入有光
 ▲泰山的獣・・・有珠
 ▲竹山
記載されているのは魚系が多いが、北のように蛇的信仰を全く感じさせない。(魚翼黄蛇という神[出入有光]が存在してはいるが。)
このことは、この山系の神の実態は水の神であり、山神はその源流の抽象化されたものということになろう。

■2 山神は人面獸身。
 ▲空桑之山[=首]的獣[食人]・・・虎文欽音自
 ▲曹夕之山鳥獸
 ▲皋之山
 ▲葛山之尾砥礪
 ▲葛山之首・・・有目六足有珠(其味酸甘)
 ▲餘峩之山的獣・・・鳥喙鴟目蛇尾見人則眠自
 ▲杜父之山
 ▲耿山大蛇
   的獣・・・翼自
 ▲盧其之山鴛鴦的・・・人足自
 ▲姑射之山 ▲北姑射之山 ▲南姑射之山
 ▲碧山大蛇
 ▲氏之山
 ▲姑逢之山的獣・・・有翼鴻鴈音
 ▲鳧麗之山的獣[食人]・・・九尾九首虎爪嬰兒音
 ▲的獣・・・羊目四角牛尾狗音
   鳧的・・・鼠尾善登木
大蛇が登場するが、特段の扱いを受けている訳ではなく、それよりは狐的獣が目立つ。
神も載であり、粗削りのトーテム信仰やシャーマニズムとは一線を画していることがわかる。

■3 山神は羊角人身
 ▲尸胡之山[=首]的獣・・・目自
 ▲岐山
 ▲諸鉤之山
 ▲中父之山 ▲胡射之山
 ▲孟子之山麋鹿,
 ▲跂踵之山大蛇,
   鯉的・・・六足鳥尾自
 ▲隅之山的獣精精・・・馬尾自
 ▲無皋之山
羊角人身神ということは、西の羊文化と、上記の山系の載の混交ということかも。

■4 山神は不詳。
 ▲北號之山[=首]的獣[食人]・・・赤首鼠目豚音
   [食人]鬿・・・白首鼠足而虎爪
 ▲旄山鯉的・・・大首
 ▲東始之山美貝
   鮒的・・・一首而十身蕪臭
 ▲女烝之山・・・一目歐音
 ▲欽山, 文貝
   的獣當康・・・有牙鳴自叫
 ▲子桐之山有鳥翼・・・出入有光鴛鴦音
 ▲人面的獣[食人]・・・黄身赤尾嬰兒音
 ▲太山的獣・・・白首一目蛇尾
   
狼、鳥、は人を喰う獣とのイメージがあるようで、山は恐ろしいとの観念がありそう。というのは、魚貝が多い地域だからである。神[出入有光]は魚なのである。


 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>>    トップ頁へ>>>
 (C) 2017 RandDManagement.com