表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.15 ■■■ 酉陽雑俎的に山海経を読む<海外西経>の対象は西南隅〜西北隅。 この西方地域のハイライトは、最後に記載される、兩龍に乗る神である。(欠落していることもある。) それは左耳に蛇の蓐収。 姿は全く異なるが、《西》白虎の前身であろう。 §もっぱら鳥トーテムである南地域のなかの【結匈國】のお隣ということでカラフルな極楽鳥的イメージの鳥がイの一番に現れる。ただ、滅蒙と名前が好戦的である。§ 【滅蒙鳥】・・・鳥青赤尾 ▲大運山 ◇大樂之野/大遺之野 【夏后啟】 §双竜に乗るのは、蓐収のような、地域全体を代表する神のようだが、特別扱いのようである。しかも三層の雲蓋付きだし。右手に環、玉璜を付けている。§ 【三身國】 §頭1つで、身体が3つとなると、どう考えても、実生活できそうにない姿。頭や手足の過不足や、キメラによる奇怪的表現とはいささか違いすぎる。そうなると、西域に、形而上学的な三身一体を語る宗教が誕生していたことになるが。§ 【一臂國】一臂一目一鼻孔 §処刑でなく、目鼻腕を欠落させる刑罰までにする社会が存在するのは不思議なことではない。§ 黄馬・・・虎文一目一手 【奇肱之國】一臂三目有陰有陽乘文馬 §外見から男女の区別がつかないのであろう。にもかかわらず、判定できる目を持つということ。恋愛の掟に厳しく、破ると腕を切り落とされるのだろう。§ ▲常羊之山 【刑天】 §黄帝に首を切られても、戦闘姿勢続行。中華帝国的な独裁者支配構造とは違い、首領が殺されると胡散するような軍隊と違い、ゲリラ戦で徹底抗戦する文化が根付いているのだろう。 成式もそういうことで注目している訳だ。§ 【女祭】with俎 【女戚】with魚觛 §山海経の一大特徴は「女」の登場。史書に限らず、経典類は「男」の世界である。中華帝国は女系社会の徹底的排除を早くから進めていたのは間違いない訳で、ここらは、滅び去った文化の残滓が記載されていると見てよさそう。 ただ、ここで唐突に登場する2名の「女」が持つのはそれぞれ俎板と海蛇。何を表現したいのかわからぬ。§ 【䳐鳥 or 維鳥】・・・人面 色青黄 【𪆻鳥】 【丈夫國】衣冠帶劍 §これは、後ろに記載される女子國のカウンターパートとして命名されたと見てよいのでは。男は"衣冠帶劍"するもの、というだけ。国名とは裏腹に、君臨しているのは女であろう。§ 【女丑】 【巫咸國】右手操青蛇+左手操赤蛇 §何故に、古代は女系かといえば、乱婚になると男系といっても、系譜をたどることが難しいからでもある。中華帝国ではこの問題についてはシビアであり、その厳しさこそが儒教的氏族観であり、反宦官制度へと振った日本とは大きく異なるところでもある。 そして、もう一つの大きな違いは、日本では古代から巫女は当たり前だった点。 日本の発想だと、古代の巫で統治される社会では女性が神の声を伺ったとなる訳だが、「山海経」はその感覚に近そうなのである。巫咸國とは、巫女國であろう。一方、中華帝国を支えてきた儒教の占術はもっぱら男が担当している筈である。§ ▲登葆山[群巫の地] 【女子國】兩女子居 水周 居一門中 §2名の女性が支配する国である。巫女と女将軍のコンビであろうか。おそらく、女系であろう。§ 【軒轅之國】人面蛇身 尾交首上 八百歳 §ここは非常に悩ましい箇所である。従って、通常は無視される。 五帝之首たる黄帝は"少典之子,姓公孫,名軒轅"[「史記」五帝本紀]とされているからだ。どう考えて、ここの出身者がなり上がって黄帝に就任したと解釈するしかあるまい。そして、その姿は、人面蛇身な筈。なにせ、ここは、蛇が絡み合う地なのである。再生を繰り返して、最低800年は生きると主張している民の地なのだ。§ ▲窮山 ◇諸夭之野 鸞鳥, 鳳鳥 "民"・・・食鳳鳥卵 百獣, 四蛇 鰕 or 龍魚陵・・・狸的 神聖乘 鼈魚・・・鯉的魚 【白民之國】白身披髮 §白色人種が存在していると。これは、ユーラシアのアーリア系を指しているのではなく、北アフリカの白色人種であろう。背中が盛り上がる乗用動物とは一瘤駱駝しか考えられないからである。§ 乘黄・・・狐的 角[背上] 乗用 【肅慎之國】 §三国時代迄、"肅慎"は黒龍江周辺のツングース系部族名称として使われている。隋〜唐代では靺鞨や渤海の支配地域の勢力ということになる。大荒北経では、それに該当つす形で登場するが、ここは海外西経であり、もともとの地は西にあり、ステップの道を経て大陸の端に至ったということかも知れぬ。 もっとも、樹木の皮を衣服にするとされているから、白樺林があったに違いなく、ツングース勢力の地域との見方でよいと思われる。§ 雒棠・・・衣用樹木(by聖人代理) 【長股之國 or 長腳之國】被髮 §身長あるアーリア系の人々の国を指すと思われる。§ 西方神蓐收・・・左耳上有一条蛇乘駕在兩条龍上飛行 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |