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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.4.24 ■■■

酉陽雑俎的に山海経を読む

--- 大荒南経 ---

<大荒東経>でお気付きになったと思うが、大荒経は海経の一部とされているが、どうみても全く性格の異なる書。
<大荒東経>は9区画に中央海神という構造を明確に打ち出していたが、ゴチャゴチャせざるを得ない南地区を記載する<大荒南経>でもそれが踏襲されている。中央神はよくわからぬが、不廷胡余ということか。

ここで注目すべきは、記載されている山々が中華帝国の河川の大元という点。

つまり、大荒経は異境の地の解説書という位置付けではなく、中華帝国を支えている地ということになる。

こうした構造化手法は、大荒経全体に貫かれていると言ってよいだろう。

中華帝国の地勢を俯瞰的に整理し再構成した訳である。官僚的発想そのものであり、当然ながら、これにより、全土は升目で指定されることになる。すべての国の配置が黄帝の下に規定されるのである。
現実を地図化したのではなく、中華帝国全体の思弁的分類地図を現実に当て嵌めているのだ。このような説明はわかりにくいかも知れぬが。

ともあれ、そのそれぞれの小さな升目のなかに各国が位置付けられることになる。同時に、黄帝とどう繋がっているかの系譜や事績が語られる。早く言えば、国名とそれが帝とどう関連しているかさえわかれば、後はどうでもよいのである。一見、個別の神話が記載されているように見えるが、黄帝が差配する全氏族のマップが出来上がっており、各国は、そのなかでどういう位置付の神や部族なのかが読み取れるようになったということ。

これこそ、儒教の根幹をなす宗族信仰そのもの。

要するに、各国の民は(といってもその支配層と神人だけを指す訳だが、)"姓"名を帝から賜る訳である。
もちろん、表面的には、その名前は各地の自然発生的なもので、帝が認知するという形式になることが多いが。これは単なる政治的な配慮であって、そのような神話を収載したい訳ではない。意味のない神話は抹消されるのである。(従って、中華帝国では、整理された神話収集書は絶対にあってはならないのである。)

以上のような記載を欠く国は、中華帝国隷属というか、黄帝による中華帝国マップに位置付けられることを頑なに拒み続けていることを示しているといえよう。例えば、毛羽が生えている民や、卵を産む民の国が典型である。おそらく、原始宇宙は卵といった、中華帝国内では、かなり異なる創生神話を持つ国々でもあろう。
言うまでもないが、このような国々を興味半分で記載する訳がなく、早晩、それらの国々を中華帝国文化の傘のなかに入れようと画策しているのである。それが儒教の宗族信仰の裏面である。(日本での地誌書と目される風土記とは全く異なる目的で作られているということ。儒教の宗教的部分を削除したからである。)

つまり、大荒経と、海内経や海外経との整合性を検討する意義はほとんどないと言ってよいだろう。ただ、特に触れられている各国産品があれば、それは、その国の重要性を示している可能性はあろう。

---南海之外 赤水之西 流沙之東---
   [獸]・・・左右有首
   雙雙・・・三青獸相並

---南海之中---
  ▲阿山  ▲天之山-∬赤水窮焉
  -赤水之東-
  舜 & 叔均@蒼梧之野(葬所)
   文貝 離 𩿨久 鷹 賈 委維
   熊 羆 象 虎 豹 狼 視肉
  ▲榮山-∬榮水出焉
  -K水之南-
  玄蛇 食麈
  ▲巫山
   黄鳥@西側・・・帝藥 八齋
   黄鳥@巫山・・・司此玄蛇

---大荒之中[1]---▲不庭之山-∬榮水窮焉
   [人]娥皇[帝俊妻]・・・三身 生此
【三身之國】[姚姓]・・・黍食 使四鳥
  四方淵[北:少和之淵 南:從淵] 四隅皆達・・・北:K水 南:大荒 舜之浴所
  ▲成山-∬甘水窮焉
【季禺之國】之子・・・食黍
【羽民之國】・・・生毛羽
【卵民之國】・・・生卵

---大荒之中[2]---▲不姜之山-∬K水窮焉
  ▲賈山-∬水出焉
  ▲言山 ▲登備之山 ▲シシ之山
  ▲蒲山-∬水出焉
  ▲隗山(西側産出:丹 東側産出:玉)
  ▲尾山-∬漂水出焉
  ▲翠山
【盈民之國】[於姓]・・・黍食 方食木葉
【不死之國】[阿姓]・・・甘木是食

---大荒之中[3]---▲去・・・南極果,北不成,去

---南海渚中---
  [神]不廷胡余・・・人面珥兩青蛇 踐兩赤蛇
  [神]因因乎 or 因乎@南・・・來風曰乎民,處南極以出入風
  ▲襄山 ▲重陰之山
  [人]季釐・・・食獸
    帝俊→生→季釐
【季釐之國】・・・緡淵の地
    少昊→生→倍伐→降@緡淵
  -四方水"曰俊壇"-
民之國】
    帝舜→生→無淫→降@處(巫民)
  巫[姓]・・・食穀 不績不經 服也;不稼不穡 食也
  爰・・・歌舞之鳥
  鸞鳥・・・自歌
  鳳鳥・・・自舞
  百獸・・・相群爰處 百穀所聚

---大荒之中[4]---▲融天-∬海水南入焉
  [人]鑿齒・・・殺by羿
  
民之國】[桑姓]・・・食黍,射是食
  [人]・・・方弓射黄蛇
  ▲宋山
  [赤蛇]育蛇 楓木・・・蚩尤所棄其桎梏
  [人]祖状之尸・・・方齒虎尾
  小人
【焦僥之國】[幾姓]・・・嘉穀食

---大荒之中[5]---塗之山-∬青水窮焉
  ▲有雲雨之山[木]
   ・・・禹攻雲雨,有赤石焉生欒,黄本,赤枝,青葉,群帝焉取藥
【伯服國】
    →生→伯服・・・食黍
【鼬姓之國】 
   ▲宗山 ▲姓山 ▲有壑山 ▲陳州山 ▲東州山
   ▲白水山-∬白水⇒白淵・・・昆吾之師浴所
  [人]張弘・・・[海上]捕魚
【張弘之國】・・・[海中]食魚,使四鳥
  [人]・・・鳥喙 有翼 方捕魚@海

---大荒之中[6]---
【驩頭之國】[人]
    (士敬[鯀妻]→生→炎融→生→驩頭)
     ・・・人面鳥喙有翼 食海中魚 杖翼行 維宜楊是食
  帝堯 帝 帝舜・・・葬所@岳山
  文貝 離 𩿨久 鷹 賈 延維
  視肉
  熊 羆 虎 豹
  朱木 赤枝 青華 玄實
  ▲申山

---大荒之中[7]---▲天臺-∬海水南入焉

---東南海之外,甘水之間---
【羲和之國】
  [女子]羲和[帝俊之妻 生十日]・・・方浴日於甘淵
  ▲蓋猶之山
    上・・・甘柤[枝幹皆赤],黄葉,白華,K實
    東・・・甘華]枝幹皆赤],黄葉
  [青馬、赤馬]三騅
  視肉
  [小人]菌人
  ▲南類之山
  遺玉
  青馬 三騅 視肉
  甘華
  百穀


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