「酉陽雑俎」の面白さ焼畑民的風習 (20170526)

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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ　2017.5.26 ■■■

焼畑民的風習

「卷四境異」には、極く短い文がある。・・・

獠在牂牁，
其婦人七月生。
子死，則堅棺埋之。

獠＝犭[犬]+尞[焼荒]であり、字源的には夜間に山上四周に点火し犬を放つと読める。辞書では、形容詞として面貌凶悪の意味になると。名詞だと古民族で百越族に入る壮族/チワンの祖との説もあるようだ。[「説文」]
牙があるのだろうから、犬トーテムで、焼畑農耕と採取狩猟併存の部族を指す集合名詞と考えるべきかも。(壮族のプロフィールとは全く違うが。)
それを、唐代は固有名詞で使っていたのでは。そんな生活を続ける部族は希少だったということ。
雲貴高原には、今でも残っていたりしかねないが。

牂牁とは郡名で、場所としては、黔南黄平辺りとされている。現代でも、少数民族乱立の地である。古代から続くと目される夜郎国＠貴陽と並ぶ且蘭国を指した地名のようだ。
以且蘭有琢船牂牁處，乃改其名為牂牁。牂牁地多雨獠，俗好巫鬼禁忌，寡畜生，又无蚕桑，故其郡最貧。
　　[「後漢書」卷八十六南蠻西南夷列傳第七十六]

その地では、妊娠期間が７カ月とされているが、これは、正式な結婚から数えての月数だろう。生理の知識が欠けている訳がなく、独特な性の風習の社会だったことを物語る。

葬制についても、屈葬でないことに驚いたご様子。労力が少なくて済む上に、死者の悪さを防ぐために閉じ込める意味が加わるから、当然、屈葬との思い込みが間違っていたのだろう。
貧しい地域なのに、堅木製の棺を用いるのも凄い。遺体伸展土葬が極めて重要だったことになる。ただ、方位も重視されていたかはわからぬが。
伸展姿勢は儒教的魂魄信仰と親和的だが、この地が儒教と関係していたとは思えまい。
そして、"則"という文字にも、ハッとさせられた気分が表れていそう。死ぬ前に、すでにお棺が用意されていることを意味しているからだ。これは、儒教圏では当たり前だが。

してみると、大陸における葬儀様式重視は、儒者の出身がその担当だったからではなさそう。そんなことに。気付かされたのだろう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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