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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.6.11 ■■■

戲術

「卷五怪術」から。・・・

王潛在荊州,百姓張七政善治傷折。
有軍人損脛,求張治之。
張飲以藥酒,破肉去碎骨一片,大如兩指,
  塗膏封之,數日如舊。
經二年余,脛忽痛,復問張。
張言 前為君所出骨,寒則痛,可遽覓也,
 果獲於床下。
令以湯洗貯於絮中,其痛即愈。

王潛[母親は玄宗長女.]が荊南節度使を拝命した頃のこと。
百姓の張七政は傷や骨折の治療が得意だった。
ある軍人が、脛を損傷。張に治療を頼んできた。
早速、張は薬酒を飲ませ、
 肉を破って砕けた骨の一片を取り去った。
 2本の指位の大きさだった。
そして、切ったところを塞いで封をしてから軟膏を塗布。
数日で回復。
ところが、それから2年経ち、突然にして脛が痛み出した。
そこで、再び、張に尋ねることにした。
張は、
 貴君から以前取り出した骨が問題の箇所。
 寒くなるととソレが痛むのです、と語った。
 そして、できるなら、探しあてなさいと。
はたせるかな、その骨は床下で見つかった。
そこで、お湯で洗浄し、真綿でくるんで保管することにした。
その結果、痛みは治癒。


これは、現代でも続いている霊感療法にすぎない。
特段驚くようなものではなかろう。

"隠れ反科学勢力"のマスコミがそれを繰り返し煽っているのは御承知の通り。昔と違うのは、極めて少数とはいえ、そのインチキ性を知らしめようと積極的に活動する人がいるというにすぎない。
例えば、インドの霊感師が行ってきた手術を、鶏の内臓を用いた奇術と見なし、その手口を実際にやって見せたりしたことがある。[James Randi]

成式がいみじくも書いているように、この治療の本質は"戲術"なのだ。・・・

王公子弟與之狎,嘗祈其戲術。
張取馬草一掬,再三之,悉成燈蛾飛。

王公の子弟は、張とは懇意でなれなれしくしていた。
たまたまだが、その"戲術"を見せてくれと懇願した。
そこで、張は、秣(馬草)を一つかみ。
再三にわたり、それを擦っていたが、
 しばらくすると燈蛾に成って飛んでいった。


もう一つある。
こちらは人気の話のようだ。・・・

又畫一婦人於壁,酌酒滿杯飲之,酒無遺滴。
逡巡,畫婦人面赤,半日許可盡,濕起壞落。
其術終不肯傳人。

壁に一人の婦人を描いて、
 酒を満たした盃を持っていき飲ませた。
ところが、酒は一滴もこぼれなかったのである。
そうこうするうちに、絵画上の婦人の顔面が赤くなってきた。
半日もそのままにしていると、完全に出来上がってしまった。
絵は湿ってしまい、壊れて落ちてしまった。
張は、
 最後まで、この術を人に伝えるのをよしとはしなかった。


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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