表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.6.12 ■■■ 新興宗教「卷五怪術」には、お告げの書や、聖典を突然発見して新興宗教を始める話が掲載されている。・・・韓佽在桂州,有妖賊封盈,能為數裏霧。 先是常行野外,見黄蛺蝶數十,因逐之, 至一大樹下忽滅。 掘之,得石函,素書大如臂,遂成左道。 百姓歸之如市, 乃聲言某日將收桂州,有紫氣者,我必勝。 至期,果紫氣如疋帛,自山亙於州城。 白氣直沖之,紫氣遂散。 天忽大霧,至午稍開霽。 州宅諸樹滴下小銅佛,大如麥,不知其數。 其年韓卒。 韓佽[政治家の朝宗[686-750年]の孫]が桂州@現広西壮族自治区桂林に居た頃の話。 封盈と呼ばれる妖賊が、数里に及ぶ霧を発生させたりしていた。 先のこと。 何時も野外に出向いていたのだが、数十の黄立羽蝶[黄蛺蝶]が飛んでいるところに出くわした。その群れを追跡していたら大樹の下に到達。蝶はそこで忽然と消滅。 そこで、その下を掘ったところ、石函が出て来た。丁度、、二の腕位の大きさの素っ気ない書がでてきた。 と言うことで、邪道ではあるものの新興宗教を立ち上げた。 時期がよかったのか、百姓達がこれに帰依し、門前市をなすが如き盛況。 そんなこともあって、声高に言い始めたのである。・・・ 某日には、将に桂州を収めん、と。 紫気さえ我が方につけば、勝利間違いなしとも。 その時が来た。 果たして、何十メートルの絹布を広げた様に紫気がやってきて、 山から始まり州城に至るまで覆いかぶさった。 ところが、白気が沖から出てきたので、紫気は退散していった。 天気は、たちまちのうちに、濃霧状態に。 だが、午刻になると、はればれした快晴にむかったのである。 そして、州の家宅にある様々な木々から、小さな銅佛が滴り落ちてきた。 その数たるや麦粒の如しで、まさに無数。 韓佽が死んだのは、その年のことである。 この話、太平道を想起させる。何時もの様に薬草を採りに山に入ったが、曲陽の水辺で白い絹に朱の罫を引いた「太平清領道」を入手できたというのだから。それをもとにして、教団が設立されたのである。十余年で華北一帯で数十万の信徒を獲得したとされる。そして、中国史上最初の大規模宗教反乱"黄巾の乱"に繋がるのである。そのスローガンは"黄天當立…天下大吉"であり、漢王朝転覆を目論んだもの。 わざわざ黄色の蝶を持ち出すから尚更そんな印象を強めるのである。 この蝶は東アジアに広く分布しており、至ってポピュラーな種であり、逸話は効いたことがない。虫屋さんによると、甘味にいたって弱いとか。拡大写真だと、前脚を胸に畳んでいるのか、足4本に見える。これは、偉大な進化かも。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |