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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.6.29 ■■■

エクストリームパンク処断

今村注によれば、"楊虞卿の経歴からみて、褒貶の意を寓したと推測できる"という、「黥」の話が収載されている。・・・

楊虞卿為京兆尹時,
市裏有三王子,力能巨石。
遍身圖刺,體無完膚。
前後合抵死數四,皆匿軍以免。
一日有過,楊令五百人捕獲,閉門杖殺之。
判雲:
 “鏨刺四支,
  只稱王子,
  何須訊問,
  便合當罪。”

楊虞卿が京兆の尹だった時のこと。
市里に、三王子と呼ばれている者がおり、
巨石を手に持って高く上げる力を持っていた。
この男、全身遍く刺青を入れており、
完膚無きまでに入墨していたのである。
前後合わせると、死罪に抵触しそうなことが4回もあった。
いずれも、軍に逃げ込み匿われて逃れていた。
ある日のこと、過失が見つかった。
楊虞卿は、五百人に命令を発し、捕獲した。
ただちに門を閉じ、杖殺してしまった。
その判決。
 四肢に刺青とくる。
 その上、唯々、王子と僭称だ。
 須らく尋問する要など、何処にあろうか。
 有罪は当たり前。


京兆の尹とは、現代で言えば首都の長である。
しかしながら、小生は浅学故、楊虞卿という人物については全く知らない。「新唐書」にはその経歴が詳しいが、権謀術数を駆使した権力闘争の真っ最中にいたのであるから、毀誉褒貶は当たり前だろう。
以下は、「舊唐書」本紀第十七下 文宗下。・・・
 (大和九年/835年)八月…
 (李)宗閔党楊虞卿、李漢、蕭浣皆再貶。

楊虞卿の句として伝わっているものは余りに少なく、例えば、以下など、正直な所、なんだかネである。
 河勢昆崙遠,山形秋。

ただ、白楽天の妻は、楊汝士の妹(楊虞卿の従父妹)らしい。もちろんのことだが、貧の進士が高門の血縁化を果たした訳である。(但し、夫婦の情は深かったと思われる。小生は、妻とは生死を共に、という思想の持主と見る。)
そして、白居易:「與楊虞卿書」が残っている。
どう見ても、両者に親密な交際関係があったのは間違いないところ。

成式は、パンクに対しては、それなりの情を持って接していたと思うが、度を越えた悪漢については容赦なく叩き潰すしかなかろう、と考えていたのではないか。
但し、エクストリームと一般パンクを一緒にするな、と。従って、前者を潰すに当たっては極力明るくあっけらかんと。
マ、小生の想像にすぎぬが。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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