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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.7.9 ■■■

蟹観察三昧[2:食材化困難]

これは食べるどころの話ではなさそうな蟹が紹介されている。
流石に、これは無理ではないかと言いたいが如くに。その名は"千人捏不死"。
本当かネ。・・・

千人捏,形似蟹,大如錢,
殼甚固,壯夫極力捏之不死。
俗言千人捏不死,因名焉。


後代だが、明 楊慎:「藝林伐山」に引かれており"千人捏,似蟹,大如錢,殻甚堅,壮夫極力捏之不死,俗言千人捏不死,因以為名,或以謔市倡。"とあるそうだ。
ともあれ、「千人捏不死」は俗名。本名を書かないところを見ると、極めてポピュラーな種と見てよいだろう。

そして、蟹に似ているとされてはいるが、甲殻類でコインのような形状だから、蟹類以外は考えにくい。

そうなると、干潟の水際に生息する豆形拳蟹とする説が一番妥当では。

この小さな蟹は、それこそどこにでもいるような種だが、一般の蟹と違って動きが遅い。それに、多少は前後にも歩くし、触ると動かなくなる。若干ではあるものの、チョコマカ動き回る蟹らしさが欠けていると言えなくもない。

だが、一番の特徴は、小さくて、とてつもなく硬い甲羅だという点。
確かに、1,000人がかわるがわる摘まんで押し潰そうとしても歯が立つまい。叩き割るのが面倒な殻だから、出汁用にも向いていない。
余程、口蓋と歯が強い動物でない限り、食の対象にはしないと思われる。しかしながら、この世の中、探せば結構身近なところに天敵はいるもの。そうでなければ、大繁殖している筈なのだから。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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