表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.7.27 ■■■ 五色亀浦島太郎の話は、日本では知らない人がいないが、その原型には"五色龜"が登場することはほとんど知られていない。與謝郡日置里筒川村の水江浦嶼子の話である。・・・ 独乘小船汎出海中,爲釣経三日三夜,不得一魚。 乃得五色龜。 心思奇異,置于船中即寐。 忽爲婦人。 [「丹後国風土記」の逸文] 五色は、五行から来たのだろうが、亀の色はもともと黒とか青。それでも5種類というのならわからぬこともないが、一匹が5彩色というコンセプトはかなり無理があろう。 しかし、道教的には五色龜の概念は是非とも欲しいところだろう。亀が地上を支えており、天は甲羅状のドームといった世界観があるのだから。・・・ 《玉策記》曰,千歲之龜,五色具焉。 [「抱朴子」内篇對俗] 靈龜者,黝文五色,神靈之精也。能見存亡明於吉凶。 [「洛書」] そして、「酉陽雑俎」は、そこらを指摘している訳である。・・・ 史論作將軍時,忽覺妻所居房中有光,異之。 因與妻遍索房中,且無所見。 一日,妻早妝開奩,奩中忽有五色龜, 大如錢, 吐五色氣,彌滿一室。 後常養之。 [卷十五 諾皋記下] 史論が将軍になった時のことである。 妻の居室のなかから光が射していることに気付いた。 これは異なること、と。 そこで、妻と一緒に、その部屋を遍く探索してみた。 しかし、見たところ、どうということもなかった。 一日たち、朝早く、妻は化粧をしようと、 手回り品をしまっておく箱[奩]を開けた。 忽然として、その中から、五色龜が現れた。 銭の大きさで、五色の気を吐いた。 そして、部屋は遍くその気に満たされたのである。 その後、この亀を何時も養うことにしたという。 小生は、この龜とは写実的なスッポン形鼈合子と同類のものと見る。 (正倉院宝物は、青斑石[蛇紋岩]製[15cmLx3.5cmH]で、目は琥珀、甲羅には銀象嵌+金泥の北斗七星文。)[→(C)宮内省] 明らかに玉相当の"霊亀"であり、背の金色の北斗七星が光輝き、五色の気を吐く訳である。 この入れ物に何が入っていたかは自明である。丹薬以外に考えられまい。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |