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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.1 ■■■

乳母の家神化

身分制度下での乳母の扱いは難しい。・・・

司倉者,家在荊州。
其女乳母鈕氏,有一子,妻愛之,與其子均焉,衣物飲食悉等。
忽一日,妻偶得林檎一蒂,戲與己子,孔母乃怒曰:
 「小娘子成長,忘我矣。常有物與我子停分,何容偏?」
吻攘臂,再三反覆主人之子。
一家驚怖,逐奪之。
其子状貌長短,正與乳母兒不下也。
妻知其怪,謝之,鈕氏復手簸主人之子,始如舊矣。
為災祥,密令奴持暗撃之,
正當其腦,然反中門扇。
鈕大怒,詬曰:
 「爾如此勿悔。」
知無可奈何,與妻拜祈之,怒方解。
鈕至今尚在其家,敬之如神,更有事甚多矣。
 卷十五 諾皋記下
[@山東城]で司倉を務めるという者が居たが、
家は荊州
[@湖北]にあった。
その女子の乳母は鈕氏と言い、息子が一人いた。
そのため、の妻はこの子を可愛がっており、
我が子同然に扱い、着物や食べ物も同等な扱いをしていた。
突然のことだが、
ある日、妻が偶然に林檎を1個手に入れたのだが、
戯れに、それを自分の子に与えたのである。
それを見て、乳母が怒って言うことには、
 「小さかったのに、ここまで大きくなってしまうと、
  私のことなど、お忘れになってしまったんですね。
  何時も、モノがあれば、
  私の子にお与え下さったのに、それを止め、
  えこひいきするとは、どういうことですか?」と。
そう言ってから、
唇を噛み、腕をあげて、再三にわたり
 主人の子供に覆いかぶさりゆすった。
家の人々は、恐れおののき、子供を奪い返した。
すると、その子の容貌と身長が、乳母の子供のように。
妻は、これは妖怪の仕業と知り、謝罪。
鈕氏が再びゆすったところ、主人の子供はもとの姿に戻った。
は、これは災禍の祥と気付き、秘密裏に、
奴に命じてを持たせて闇討ちさせた。
正に脳天を目がけて当てたのだが、
上手くいかずに門扉に跳ね返ってしまった。
鈕は大いに怒り、汚い言葉で罵った。
 「こんなことをすれば、後悔することになるゾ。」と。
は、これは手のつけようがないことを知り、
妻と共に、ひたすら拜祈するのみ。
そこで、ようやくにして、怒りが解けた。
鈕は今に至るも、その家におり、
神のように敬われている。
付け加えるなら、
この家では、
さらに多くの事件が発生したのである。


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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