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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.8 ■■■

なんと蛇首スッポン

蛇頭スッポンの記述は凄い。
現代の日本人でも、その存在を知らない人がほとんどなのだから。・・・

【矛】,
蛇頭身,入水縁樹木,生嶺南,南人渭之矛。
膏至利,銅瓦器貯浸出,惟卵殼盛之不漏。
主腫毒。
  [卷十七]廣動植之二 蟲篇]

我々がよく知る亀とは、【曲頸,陰頭頸,潜頸/潜頸】類である。(曲頸は中国での名称で、誤解を生み易いので注意を要する。)
首が引っ込むタイプである。
大きく分類すれば、特殊な棲息と言える海亀と陸亀を除くと、3種類。
 /噛付亀
 動胸龜/泥亀
 /スッポン
しかし、この範疇から外れた亀、【側頸/曲頸】類が存在する。見れば一目瞭然だが、首が引っ込むのではなく、側面に曲がるのである。日本〜中国には居ないとされている。
大きくは2系統。ユーラシア大陸の一部にも棲息している。
 蛇頸龜/蛇首亀…@インドネシア〜パプアニューギニア〜オーストラリア棲息
 非洲側頸龜/横首亀…@イエメン〜サウジアラビア

これを考えると、"矛"とは、ヘビクビガメの仲間と指していると考えて間違いなかろう。
確かに、突然にピンと首を長く伸ばして餌に喰らいつく姿は"矛"と呼ぶのは妥当なところ。

インドネシアには棲息していても、インドシナ半島には居ないようだが、このことは海のルートで嶺南の海南島広西辺りに持ち込まれて繁殖していた可能性を示唆すると言ってもよかろう。
但し、このタイプの亀は、陸上に上がるのは、甲羅干しをする一部種だけと言われている。しかし、貪欲であるから、樹木のある水辺での食餌を旨としている種がいてもおかしくない。

肉食で熱帯棲だから、肉の脂肪分[膏]は深海鮫肝油並にきめ細かいものになっているのかも。そのレベルだとすれば、素焼きの容器では貯蔵できないのは当たり前。いくらサラサラと言っても、流石に、卵殻は通さないだろう。
そのような高品質な油脂が抽出できるなら、確かに利用価値高し。特に、皮膚に塗れば極薄皮膜ができるから、様々な効果が生まれること間違いなしである。

もっとも、素晴らしい品質のものが採れることが知られた瞬間に絶滅の道をひた走ることになる。中華帝国内では生き残れまい。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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