表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.14 ■■■ 淡水エイ読んだ瞬間、これは解らんと匙を投げたくなるが、落ち着いて考えればどうということもない話かも。・・・【異蟲】, 溫會在江州,與賓客看打魚。 漁子一人,忽上岸狂走。 溫問之,但反手指背,不能語。 漁者色K, 細視之, 有物如黄葉,大尺余,眼遍其上, 嚙不可取,溫令燒之落。 毎對一眼,底有觜如釘, 漁子出血數升而死,莫有識者。 [卷十七 廣動植之二 蟲篇] 【異蟲】 溫會が江州@江西九江に居た頃のこと。 賓客と一緒に投げ網漁を見守っていた。 忽然と、漁師の一人が岸にあがり、狂ったように走り始めた。 溫會はどうしたのか問うたが、ただ、手を裏返しにして背中を指さすのみ。言葉にならなかった。 その漁師は色黒であったが、細かく視てみると、1尺ほどの大きさで黄色くなった葉のようなものがあり、その上に遍く眼がくっついていたのである。 これを取り去ろうとしても無理だったので、溫會は焼いてしまえと命じようやくに落とせた。 見てみると、一対の眼毎に、その底に釘の如き嘴があった。 その漁師だが、出血量が数升にも達し、ついに死んでしまった。 そのモノを知る人なし。 水中の生物から、物理的に身体を傷つけられる例としては、大型肉食系を除けば、鋭利な部分によるものばかり。嘴のようなものに噛いつかれて出血多量で死亡との話は聞いたことがない。 不用意に噛まれてしまい死亡する場合は、出血は少量で、注入された毒液が原因である。この話も実はそういうことかも知れないが。 ただ、身体に遊泳中の生物がくっついてしまうことは理屈ではあり得ないことではない。 タコ類やエイ類には吸盤やトビ口があったりするし、クラゲも足の無数の棘があるから、小型種にヒトがチョッカイを出そうとでもすれば、身体に喰いついて離れなかったりするかも。襲おうとする大型肉食類には二度と来ないように徹底して襲撃する習性を持っていたりすると悲惨な事態も予想される。 マ、葉形というのだから、常識的推定では小型の淡水エイということになろうか。つまり目立つ真黄色ということではなく、薄く黄色味を佩びた褐色の色抜け的な色調ということ。枯れ葉みたい、ということになろう。 エイであるから、当然ながら毒がある。一寸、刺されだけで猛烈な痛みに襲われる。そんな輩にとりつかれれたのだからひとたまりもなかろう。 ただ、誰も知らない生物だったというのが、気にかかる。漁師連中が知らないとは思えないし。特定の狭い地域限定種で、エイの通常形状とはえらく違っていたということだろうか。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |