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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.9.22 ■■■

六博ゲーム

賭博という言葉の大元のゲームがとりあげられている。ただ、その意味は想像する以外に手無し。・・・

今六博齒采妓乘,乘字去聲呼,無齒曰乘。
據《博塞經》雲:
 “無齒為繩,三齒為雜繩。今樗蒲塞行十一字。”
據《晉書》,
 劉毅與宋祖、諸葛長民等東府聚戲,並合大擲,判應至數百萬,
 余人並K犢已還,毅後擲得雉。


"六博"とは、文字的には骰子/サイコロの1〜6の目を指すが、サイコロの目の数で盤上の短角柱状の"棊"(黒白各6個)を動かす、局戲[=版圖遊戯/ボードゲーム]の名称である。双六に似ているが全くの別扱いである。正式名称は""のようだ。("六箸十二棊"[説文解文]ということで"六"がついているのだろう。)
サイコロと言えば、🎲のような多面体と思ってしまうが、ここでは"箸"である。
その後、煢[18 or 14面]と瓊[4 or 4面]というサイコロが使用されるようになったようだ。

ダイスゲームという点だけみれば、"樗蒲"が原典といえそう。ただ、唐代には廃れていたのではないかと思うが。こちらは、表裏が黒白の平板5枚の裏表で決める。
(うち2枚は"貴"[犢/雉]。残り3枚は"雑")
こんな風になっていたという。(各種ありそうな印象。)・・・
 <"采"の目の例>
 ■■■犢犢…盧[16進]
 ■■■雉雉…雉[14進]
 ■■■…開[12進]
 □□□…塞[11進]
 □□□犢犢…犢[10進]
 □□□雉雉…白[8進]
 以上が"貴采".以下が"雑采".
 □□■雉雉…塔[5進]
 ■■□犢犢…禿[4進]

これがわかったからといって、どうにもならぬが、齒[=骰子/サイコロ]"采"の呼び方の面白さを指摘していそうなことはわかる。
小生としては、<賭博>とは"無采(銭)"[=花銭]を"妓女"に注ぎこむ遊びということとの当て字話と読んだ。
十一字とは、上記の<"采"の目>は11種類あるというのであろう。
"無"記載の■□は3つあり、"采"ではなく"繩"とも呼ぶ訳か。サイコロの形が違うのかも。

上記を踏まえると、ようやく「普書」の引用文が読めるようになる。
後於東府聚樗大擲,一判應至數百萬,余人並K犢以還,唯劉裕及毅在後。毅次擲得雉,大喜,衣繞床,叫謂同坐曰:
 「非不能盧,不事此耳。」
裕惡之,因五木久之,曰:
 「老兄試為卿答。」
既而四子K,其一子轉躍未定,裕弱゚喝之,即成盧焉。
毅意殊不快,然素K,其面如鐵色焉,而乃和言曰:
 「亦知公不能以此見借!」
既出西,雖上流分陝,而頓失内權,又頗自嫌事計,故欲擅其威強,伺隙圖裕,以至於敗。

  [「晉書」卷八十五 列傳第五十五]
しかる後、東府に集合。"樗蒲"投げの大競技会を行った。
数百万の賭けと取決め。
せいぜいが"黒"や"犢"が出たところでリタイアだらけ。
ところが、劉裕と劉毅だけは残って続けたのである。

ここで、成式は引用を打ち切ったが、この後は、よく考えれば結果は想定の範囲である。・・・
毅は次に投げて、"雉"を出し、大喜び。
衣を袴のようにして、長椅子の周りを巡った。
そして、座の一同の人々に言い放った。
 「"盧"を出せないのではないゾ。
  そんなことを気にかけていないだけ。」と。
裕はその言い草が気に食わなかった。
そこで、サイの五木をしばらくもみくちゃにしてから言った。
 「老兄として、試しに、卿にそのご返答を申し上げよう。」と。
すぐに、4子はすべて黒。
残りの1子は、コロコロ回ったり跳ねたりして定まらず。
裕は、ここぞとばかり万声をはりあげ喝をかけた。
すると、サイの目が決まり、"盧"ができた。
当然ながら、毅の気持ちとしては、殊更に不快といったところ。
確かに、もともと地黒であり、顔色は鉄色だったし。
しかし、言葉を和らげて言ったのである。
 「どうせ、公が見逃してはくれまいとはわかっていたのだがネ。」


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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