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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.9.24 ■■■

八座尚書の笏

高級官僚の笏についての記載がある。
成式にしては、珍しく、怒りを覚えていそう。・・・

《梁職儀》曰:
 “八座尚書以紫紗裹手版,垂白絲於首如筆。”
《通誌》曰:
 “今録仆射、尚書手版,以紫皮裹之,名曰笏。
  梁中世已來,唯八座尚書執笏者,
  白筆綴頭,以紫紗之,
  其余公卿但執手版。”
今人相傳雲,
  陳希烈不便笏,騎馬以帛裹,
  令左右執之。
  李右座見雲:
  ‘便為將來故事,
   甚失之矣。’
 [續集卷四 貶誤]
「梁職儀」記載
八座尚書
[左右僕射(尚書令次官)+六部尚書]は、
紫色の紗
[薄く透き通る絹織物]で裹(つつ)んだ
 手版
[朝見の儀で謁見の際に所拿する笏/タブレット]を、
首から白い糸のように垂らす。
筆のように。

「通誌」記載
今、録僕射と尚書の手版は、紫色の皮で裹
(つつ)
。笏と命名されている。
梁では中世より,唯、八座尚書だけが笏を執る者とされている。
白筆を頭に綴じ込み、紫紗のに入れた。
其れ以外の公卿は単に手版を執るのみ。


李林甫は。陳希烈[n.a.-757年]が玄宗と波長が合う上、唯々諾々者と見て、宰相にとりたてたと伝わる。(安禄山のクーデターでは即時降伏し、相変わらず宰相を務めたから処刑となるところ、玄宗のお蔭で自殺ですんだ。)
その希烈は、笏が騎馬の際に不便ということで、
帛で裹
(つつ)んで左右の従者に執らせた。
右座宰相の林甫はこれを見て言った。
 「確かに便利。
  これは将来に故事として伝わりましょう。
  甚だ、失敬な話として。」


今村注/補注の指摘に従って以下も見ておこう。・・・
○ 梁⇒染のようでもある。・・・
【笏染】「染職儀」八坐尚書以紫紗裹手版垂白絲綴頭如筆通志曰: 僕射尚書手板以紫衣裹之名曰笏染中世以來惟人主執笏者白筆綴頭以紫之其餘公卿但執手版陳希烈不便税笏騎馬以帛裹令左右執 之李右坐云便為將來故事 [宋 曾慥「類説」卷四十二 酉陽雜爼@欽定四庫全書]
○ 「通誌」は不明な書だが、「隋書」には該当箇所あり。・・・
笏,中世以來,唯八座尚書執笏。笏者白筆綴其頭,以紫裹之。
其餘公卿,但執手版。荷紫者,以紫生為,綴之服外,加于左肩。 [「隋書」巻十一志第六禮儀六]


理屈などなく、ただただ秩序維持のために有無を言わさず形式を重んじるのが官僚手技の一大特徴だが、最高官僚になると自分勝手なのがよくわかる。唯々諾々者であればあるほど、その手の御仁が多いのは誰でも知ること。
成式先生、大嫌いなのではなかろうか。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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