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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.4 ■■■

寝ながらアカペラ

老僧の凄い腕前の話。・・・
許州有一老僧,自四十已後,
毎寐熟即喉聲如鼓簧,若成韻節。
許州伶人,伺其寢,
即譜其聲,按之絲竹,
皆合古奏。
僧覺,亦不自知。
二十余年如此。
  [續集卷三 支諾皋下]

許州[@河南許昌]のある老僧の話。
四十才になり、その年を越してから後は、何時も睡眠は熟睡。
そして、床に入るとすぐに
 喉から鼓簧を鳴らすような声があがった。
いかにも、韻の節を合わせているかのよう。

許州の楽人が、その老僧の就寝中に伺い、
即刻、その声を譜面に写し取った,
管弦楽器でその通り手合わせしてみると、
古楽の奏法とすべてが合致していた。
老僧はそこで目醒めたが、全く自覚していなかった。
20年以上に渡ってそれが続いた。


覚醒している状態で、寝た姿勢で静かにしていると、誰でも自然に腹式呼吸になる。声を出すのに、最適な状況が実現されるのである。
従って、アカペラを愉しみたかったら、寝ながら練習するに限る。

しかも、寝ていると、視覚的に余計なモノからの情報が入ってこなくなるから、歌に集中できるのである。
そんなこともあって、多くの場合、自分の頭のなかから合奏あるいは伴奏の音楽が流れてくる感じがするもの。

特に僧侶の場合、「読経三昧」の修行を積んでおり、発声法には長けている。そのうえ「声明」を学んでいるから、音程感覚にも極めて鋭敏。
従って、音楽好きなら、寝ながら歌うことは、本来ならあって当たり前。
ただ、そのような行為は慎む姿勢を堅持している僧侶が多いというだけのこと。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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