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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.9 ■■■

カンランの接ぎ木

橄欖はしばしばオリーブと読むが、植物学的には、それとは無縁の樹木名である。
混乱はあるものの、間違うことはなかろう。・・・

橄欖子,
獨根樹
東向枝曰水威,
南向枝曰橄欖。
  [續集卷十 支植下]

「本草綱目」果之三(夷果類三十一種)橄欖には、
  時珍曰: 橄欖名義未詳。
ということで、よくわからない名前である。それに、果実の色や大きさで様々な名称がある。一括した名称で呼びにくいのは当然の話。しかし、それでは不便なので、とりあえず、この仲間の標準名を橄欖/カンラン/Chinese olive。としたのであろう。

ただ、樹種については、かなり気になったようだ。
それはそうだろう、紅海沿岸棲息の乳香樹やアフリカの角棲息の没薬樹も同類だからだ。(乳香は他の樹木からの製品もあるのでご注意のほど。)。
植物学上ではこの他にも、橄欖と区別されている、白頭樹、馬蹄樹、欖樹、等がある。

樹脂が注目されているなら、当然ながら、種子から油脂を採りたくなるのだろうが、量的にかなり難しそうに思われる。
従って、薬として通用しているのは、もっぱら乾燥果実。俗呼"青果"とは、このことを指すのではないか。
と言っても、果実だから"其子生食甚佳"であり、生食が基本なのは間違いなかろう。長持ちしないから、蜜漬や鹽藏にされる訳だが。

ただ、成式の伝えたいことは、そんなことではなく、根は1つだが、カンラン族の違う種類の枝がついた合成樹木があるのだゾ、という話。
「酉陽雑俎」をなにがなんでも唐代怪奇話の書としたい御仁以外なら、これはどう考えても接ぎ木技術が使われている樹木ということ。
段公路:「北戸録」卷三 橄欖子@欽定四庫全書。には、しっかりと"合成樹樹"と記載されている訳だし。・・・
子,八九月熟…南人重其真味…
亦,堪飲飲之能消酒…
愚按
「南越志」:
博羅縣有,合成樹
樹去地二丈為三衢  {←「山海經」云四衢}
東向一衢為朩威;
南向一衢為橄
西向一衢為玉文


採り入れ時期をずらすのか、異なる品種の好みに対応しているのかは定かではないものの、高度化した果樹園芸が盛んであったことになる。
これは、特段、驚くべきことではない。
中央から赴任してきた官僚にとっては、まさに目玉の果実そのものだからだ。帝御用達になれば、目出度く中央復帰とご昇進にありつける訳なのだから。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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