表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.18 ■■■ ピスタチオ"ナッツの女王"が、日本で一般に知られるようになったのは、そう昔のことではない。ところが、「酉陽雑俎」には登場してくる。間違いなく、成式先生はご賞味遊ばされていたのである。・・・ 胡榛子, 阿月生西國, 蕃人言與胡榛子同樹, 一年榛子,二年阿月。 [續集卷九] 榛/ハジバミ/Asian Hazelの実に似ている胡渡来品ということだが、阿月渾子 or 開心果/ピスタチオ/Pistachioである。 現在は、実が口を開けている様子が気にいられたのか、もっぱら開心果と呼ばれているようが、かつては渾子だった。食べ慣れている南瓜、西瓜といった種と違って雄渾だというのであろう。(ピスタチオの実は構造から見て、ナッツ類ではない。) その"胡榛子"こと"渾子"に、"阿月"をつけると、樹木名になるのである。 しからば、"阿月"とは何かだが、成式は理解していたようである。 と言うのは、「本草綱目」は"歲"だが、成式は"年"にしているから。 「本草綱目」は網羅的文献調査ベースの官僚的編集を旨としているから、おそらく、若木的な状況では実が沢山成るが、老化すると良質の実が採れなくなる程度のセンスで情報を解釈したに違いない。 一方、成式は、必ず裏を取る性格のようだから、ペルシア、レバントの農産物状況をよく知る知己の蕃人から生の話を仕入れている。この違いは大きい。 つまり、ピスタチオの収穫は隔年ということ。 本来収穫時期なのに実を採らない場合があり、それを"阿月"と呼んでいたと思われる。 「本草綱目」果之二(山果類三十四種)阿月渾子の記載は以下の如し。・・・ 藏器曰: 阿月渾子生西國諸番,與胡榛子同樹, 一歲胡榛子,二歲阿月渾子也。 曰:按:徐表《南州記》云: 無名木生嶺南山谷,其實状若榛子,號無 名子,波斯家呼為阿月渾子也。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |