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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.26 ■■■

潮間帯の水苔

「生物」の生態と環境の関係についての学び。・・・

【石發】,
張乘言:
 “南中水底有草,如石發,
  毎月三四日始生,至八九日已後可采,
  及月盡悉爛,
  似隨月盛衰也。”

石発[石髪とも書く。]について。
張乘の情報による。
 南の地域には、
  水底に生育する草で
  石発に似たものあり。
 毎月、
  3〜4日になると生え始める。
  8〜9日経った後、採取可能。
  月末になると、悉く、形が崩れてしまう。
 月の盛衰に従って生きている生物のようだ。


淡々と書いているが、読む方は端から作り話半分と見ていたりするから、無視されそうな話である。

ところが、コレ、特段、驚くような現象ではない。

例えば、河口を考えてみればよい。(勿論、現代のコンクリート護岸時代のではない。)
潮の干満で海面の高さは大きく変化し、地形によっては、異常とも言えるほどの激流が突然走る場所は少なくない。
そこは潮間帯と呼ばれるが、その幅がやけに大きい場合もある。そうなれば、月令に合わせて、消滅と復活を繰り返すような生態になる植物がいておかしくない。
要するに、そこは、見た目以上に過酷な環境なのである。それに耐えた者だけが生き延びることがでいるのである。そういう場所で育ったものは最高に美味しいという通人もいるが、本当かはなんとも言い難い。

石發は、石に付着する髪の毛のような生物を指す固有名詞であるが、似たものは色々あるから、どうしても多義とならざるを得ない。
その辺りの頭の整理には、「本草綱目」草之十(苔類一十六種)陟厘を見ておくとよい。
[釋名]時珍曰:郭璞曰:
 水苔也。
 一名 石發。
 江東食之。
 案:石發有二:
     生水中者為陟厘,
     生陸地者為烏韭。
[集解]時珍曰:
 蓋苔衣之類有五:
  在水曰 陟厘,
  在石曰 石濡,
  在瓦曰 屋游,
  在牆曰 垣衣,
  在地曰 地衣。


要するに、単なる水苔であって、浅草海苔のような藻類の一種と考えればよいのでは。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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