表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.23 ■■■ 尺取り虫の擬態と兎の毛色夔州[@重慶奉節]には巫山や巫溪といった県が含まれるが、そんな環境下にある地での話。・・・夔州刺史李貽孫雲:“嘗見水枝化為蚓。” そこの刺史の由緒ある家系の李貽孫[785-804年]は、 木の枝が蚯蚓に成るのを見たことがあると言ったことあり、と。 ソリャ、ミミズではなく、尺蛾/Geometer mothの幼虫、蚇蠖/尺取り虫/Inchwormの類の擬態だろう。 日本で有名なのは"鳶紋大枝尺蛾"。 動物園展示で、目の前に置かれた小さな木の枝をじっくり眺めて、ようやくにして気付くほどで、実にたいしたものである。これを見分ける眼力を持つ生物も存在する訳で、余程の美味かも知れぬなどと思ったりして。 続いては、重慶と、ほとんど変わらぬ社会風土の、巴州[@四川巴中]でのこと。・・・ 韋絢雲:“巴州兔作貍班。” 韋絢の妻は元稹の女兒。 「劉賓客嘉話録」や「戎幕闥k」の著者であり、各地の信仰に詳しい。 巴州にも、様々な呪術的な信仰があっただろうが、そこでこの手の兎はどう扱われていたのか、韋絢は何か言っていたのかと、読者は気になってくる仕掛けである。 実は、それはどうでもよいのである。 ここで言う斑模様の動物とは、タヌキでなくネコ的な動物だろう。どちらでも大意に影響はなさそうだが。 ともあれ、野兎に模様があるという点を指摘している訳である。 と言っても、兎の種に興味がある訳ではない。 月に関する伝説的生物の、兎、蝦蟇、桂についての議論のタネに過ぎまい。 つまり、兎には、白兎だけではなく、褐色系もいるし、模様が入っているものも存在することを確認しているにすぎまい。白色が聖なる動物を意味している訳ではないゾ、と言いたいのだと思う。 なんとなれば、鷹の羽色は環境で変わることをすでに知っていたからだ。これでもかという程に、鷹の種類を解説したのである。兎についても同じことが言える筈と考えていたに違いないのである。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |