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☀ 📖■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.27 ■■■
反亀卜
先ずは、聖亀の話から。・・・【聖龜】，
福州貞元末，
有村人賣一籠龜，其數十三，販藥人徐仲以五鍰獲之。
村人雲：
“此聖龜，不可殺。”
徐置庭中，一龜藉龜而行，八龜為導，悉大六寸。
徐遂放於乾元寺後林中，一夕而失。
村人が１籠、１３匹の亀を五鍰で売った。
購入者は薬売りの徐仲。
村人曰く、「これは聖なる亀故に、殺してはならぬ。」と。
徐仲が庭に置いたところ、
１匹が他の亀を踏みつけて出ていった。そして８匹が誘導。
悉く、大きさは６寸。
そこで、徐仲は乾元寺の後にある林で放すことにした。
一晩でどこかに行ってしまった。
"仏国"とも言われる福建福州に乾元寺が建立されたのは、西晋の282年。唐代は高僧輩出の一大仏教文化地域だった。
時代はかわって、徳宗期最後の貞元末[805年]。
四聖獣の１つ、亀は古代から聖なる動物とされて来た。大地を支える役割とされているからだとは思うが、現実には、龜卜に使われるからに他ならない。(そんなこともあって、日本語のカメとは、神の隠れ身を指す言葉との説まである位だ。)
仏教的には、「殺龜以卜，吉。」など、凡そ馬鹿げた考え方。お盆やお彼岸といった死者供養に際しては、鬼(死者の霊)と音が同じこともあるのか、亀の放生が行われることが多い。
ただ、成式がこの話を収載したのは、仏教ではなく、「荘子」の反亀卜論を踏まえたものだと思う。・・・
荘子釣於濮水，楚王使大夫二人往先焉，曰：
「願以境内累矣！」
荘子持竿不顧，曰：
「吾聞楚有神龜，死已三千歳矣，
王巾笥而藏之廟堂之上。
此龜者，寧其死為留骨而貴乎？
寧其生而曳尾於塗中乎？」
二大夫曰：
「寧生而曳尾塗中。」
荘子曰：
「往矣！
吾將曳尾於塗中。」
[「荘子」外篇 秋水第十七]
宋元君夜半而夢人被髮闚阿門，曰：
「予自宰路之淵，予為清江使河伯之所，漁者余且得予。」
元君覺，使人占之，曰：
「此神龜也。」
君曰：
「漁者有余且乎？」
左右曰：
「有。」
君曰：
「令余且會朝。」
明日，余且朝。
君曰：
「漁何得？」
對曰：
「且之網，得白龜焉，其圓五尺。」
君曰：
「献若之龜。」
龜至，君再欲殺之，再欲活之，心疑，卜之，曰：
「殺龜以卜，吉。」
乃刳龜，七十二鑽而無遺筴。
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仲尼曰：
「神龜能見夢於元君而不能避余且之網。
知能七十二鑽而無遺筴。
不能避刳腸之患。
如是，則知有所困，神有所不及也。
雖有至知，萬人謀之。魚不畏網而畏鵜闚。
去小知而大知明，去善而自善矣。」
嬰兒生無石師而能言，與能言者處也。
[「荘子」雜篇 外物第二十六]
続いて、卜の話に。・・・
【鄧州卜者】，
有書生住鄧州，嘗遊郡南，數月不返。
其家詣卜者占之，卜者視卦曰：
“甚異，吾未能了。可重祝。”
祝畢，拂龜改灼，復曰：
“君所卜行人，兆中如病非病，如死非死，
逾年自至矣。”
果半年書生歸，雲：
“遊某山深洞，
入值物蟄如中疾，四支不能動，昏昏若半醉。
見一物自明入穴中，卻返。
良久，又至，直附身引頸臨口鼻，
細視之，乃巨龜也。
十息頃方去。”
書生酌其時日，其家卜吉時焉。
鄧州に住んでいた書生が、郡の南方に遊びに行ったまま、
数カ月戻ってこなかった。
家の者は卜者に占ってもらった。
卦の見立てによると、
「甚だ奇異で、これでは私には出来ない。
重々、祝禱するしかない。」
ということで、祝禱。
さらに、亀を払って、改めて灼いて、再度、言うことには、
「君が占いをして欲しかった行人だが、兆は出た。
ただ、病のようだが、病ではなく、
死んでいるようだが、死んでいない。
年を越せば、自然にもとに戻る。」と。
しかして、半年後になって、書生は帰還し、言うことには、
「某山深くの洞に遊んでいた。
中に入ると、そこに籠っていたモノに出くわし、
疾病にかかったようになり、四肢が動かなくなった。
昏昏となり、半ば酔ったような状況に。
見ていると、明るい場所から穴の中に入ってきたモノがいた。
しかし、退却。
大分経ってから、又やって来た。
直接身体に付着し、頸部を引いて、口鼻に臨んできた。
このモノを細かく視てみると、巨龜であった。
１０ほど吐息をした頃、去っていった。」と。
書生がその時の日付を斟酌してみると、
その家の者が占トをしてもらった時であった。
鄧州[＠河南南陽鄧]の卜[＝亀甲裂の象形文字]は、殷王が神権を誇示するために行っていた亀卜の原型を留めていたのであろう。
(考古学的には「竜山文化」が最盛期。鄧州はそれより古い時代から栄えていた筈。)
国家的には、祭祀や戦いに絡む占いが中心になろうが、魏志倭人伝の記載から見て、旅立ちや帰還の占いも多かった筈。
ちなにみ、亀甲文字とは、この占い言葉に他ならず、人的コミュニケーション用文字として使われた証拠は無い。白川静の"口"論には無理を感じるが、甲骨文字は呪術としての役割があるということで、その観点から文字の起源を見直した点で画期的だった。
ところが、周代に入ると、筮を使う易が主流となり、亀卜は廃れてしまう。しかし、文字は残ったのである。
(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.
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