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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.7 ■■■

木目が美しい材

ことのほか木目が美しい材についての話。・・・

【色綾木】,
臺山有色綾木,理如綾文。
百姓取為枕,呼為色綾枕。


日本の生活感覚だと、それなら形を整えてから徹底的に磨いて、美術品として飾りたくなる。
一方、日用品として使うなら、刳り貫いただけのお椀が素敵。
だが、そのようなセンスが一般化したのは、かなり後世のことかも知れない。
,木名,有文縷可愛,多用為椀。 [洪適校注@洪皓:「松漠紀聞」]
  (林紅後方寒冷,梧葉飄時尚暖和。
 [「日用俗字」])

大陸では、夢の世界はもう一つの人生という感覚があるから、枕には特別な思い入れがありそう。従って、絵柄入りの陶器枕が喜ばれていた訳だが、同じようなセンスで、霊的に感じさせる木目の枕を使う人もいたのだろう。
日本だと、髪型維持上の都合もあり、それに合わせた木製漆塗枕が多用された時代もあったから、大陸でも同様な理由でそれなりに木製が普及していた可能性もあろう。もっとも、現代でも、ムクの木製枕を展示会で見かけるから、結構、一般化していたのかも。

ただ、大陸の内陸部は、「木器」は基本的には向いていない。堅牢な地場材は少ない上に、乾燥しているので耐久性でも問題を生じ易いからだ。
良質な渡来材は垂涎モノだったに違いない。
そんななかで、渡来モノに匹敵する地場材があるとなれば、注目されて当たり前だろう。ただ、希少であるのは間違いない。

木目が美しいという点で知られる現代高級材は、(独裁者がお好みということで、)不腐不朽とされる黄褐色の"金絲楠"である。
【色綾木】が生えている臺山とは、甘粛平涼霊台に当たるとすれば、そこに生えていることはないが、それに類似の材がとれたのであろう。

ここで注目すべきは、縷可愛の希少材としたら、普通は"皇家用"になってしかるべしという点。
非貴族非奴婢の百姓が愛好したとしか記載されていない訳で、この階層で独自の美的センスが磨かれていることを示唆していそう。
成式もそのセンスに一目置いたということになろう。

そんなこともあるのか、【色綾木】という語彙はそれなりに使われていたようだ。契丹語入詩の話に登場するからである。・・・
約使契丹,戲為四句詩曰:
“押燕移離畢,看房賀跋支。
 餞行三匹裂,密賜十貔狸。”
皆紀實也。移離畢,官名,如中國執政官;
賀跋支,如執衣、防閤;
匹裂,似小木罌,以【色綾木】為之,如黄漆;
貔狸,形如鼠而大,穴居食谷粱,嗜肉,狄人為珍膳,味如子而脆。

  [沈括:「夢溪筆談」卷二十五 雜誌二]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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