表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.9 ■■■ 譲葉ならぬ譲木讓木が登場。・・・【交讓木】, 《武陵郡記》: “白雉山有木,名交讓。 衆木敷榮後方萌芽,亦更歲叠榮也。” "白雉山"は、武陵蛮族が跋扈していた絶遠の地であろう。桃源郷のモデルでもおかしくなさそうな地である。 《武陵記》曰: 淳于山,與"白雉山"相近,在辰州,武陵二郡界。絶壑之半,有一白雉,遠望首尾可二丈,申足翔翼若虚中翻飛,即上視之,乃有一石雉舒翅綴著石上。山下有石室數畝,望室裏雖暗,猶見銅鐘高丈餘,數十枚,其色甚光明。 [「太平御覽」卷四十九地部十四 西楚南越諸山] 《江夏圖經》曰: "白雉山",其山上有芙蓉峰,前有獅子嶺,後有金鶏石,西出金,南出銅礦,自晋、宋、梁、陳以來,常置立爐冶烹煉。 [「太平御覽」卷四十八地部十三 南越諸山] さて、"交讓"の方だが、白雉山という地固有の伝承話ということではなさそうである。・・・ 退讓責讓又交讓木名兩樹相對一枯則一生岷山[甘粛南〜四川西北の山脈]有之。 [「廣韻」讓] 《任ム・述異記》黄金山有枏木,一年東榮西枯,一年西榮東枯,張華謂之【交讓木】。 [「康熙字典」] 【交讓木】とは、本来は、暖地の海岸近くに多く生えている高木の交讓木 or 虎皮楠/楪 or 譲葉/ユズリハ/(Daphniphyllum)。日本では正月の縁起モノとして、その葉は誰でもが知っている。(初夏の新葉は翌年夏すぎまで残り、成長する新葉と重なりながら入れ替わっていく。) ただ、単なる"譲り葉"現象を見せる樹木としては、常緑なのに落葉する樟樹/楠/クスノキ/Camphor Laurelや竹柏/梛/ナギ/Asian bayberryの方がよく知られていそう。 中華帝国では、宗族繁栄第一主義の儒教が広まったため、家の永続の象徴たる葉の交讓ではなく、一族永続の象徴が欲しくなり、個体木の交讓もあるとされたのではなかろうか。 しかし、「酉陽雑俎」はそれとも違い、他の種が芽を出して育っていく時は静かにしており、他が廃れると繁栄することになっている。 儒教体質を誇示する諸々の木々とは、逆の道を行くことになる。いくら宗族繁栄を叫んだところで、皆揃って衰退する時があり、そんな時に力を発揮できる異端もいると言いたげ。 成式先生は観察好きだから、植生を考えながら書いたのかも知れぬ。そうすると、落葉樹の楢/ナラと常緑樹の樫/カシの混交林イメージかも。 落葉した橅/ブナ林の春先には、花が咲き乱れるが初夏になれば全面橅の葉で太陽光がさえぎられてしまう様子をご存知だろうから。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |