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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.14 ■■■

心筋梗塞と脳梗塞の発症誘因

一種の説話で、奇譚というほどのものではない。・・・

武宗元年,金州軍事典ケ儼先死數年,
其案下書手古者,忽心痛暴卒。
如有人捉至一曹司,見ケ儼,喜曰:
 “我主張甚重,籍爾録數百幅書也。”
見堆案繞壁,皆涅楮朱書,乃紿曰:
 “近損右臂,不能搦管。”
有一人謂ケ:
 “既不能書,令可還。”
草草被遣還,隕一坑中而覺。
因病,右手遂廢。
 [續集卷二 支諾皋中]

武宗[李→李炎]元年[840年]、金州[@陝西安康]で軍官僚の任に当たっていたケ儼が、先に死亡してから数年経ち、その机下に控えて書き手役を務めていた古という者のこと。
突然のことだが、心臓に痛みを感じて死んだのである。

(その者の冥途への旅話。)
誰かに捕捉されているかの如くに進んで、役所の建物に到着。
官吏は到来した古を見て喜んで言った。
「我が主任務とする通告類の仕事は甚だ重要なり。
 それは、公式文書であって、記録は数100幅の書になる。」と。
そこで、古が眺めて見ると、
案件が堆積した状態。しかも、それが至るところの壁にあった。
それらすべてが、黒色の楮紙に朱書されていた。
それを見て、騙して対応したのである。
「最近のことですが、右臂を損傷しまして。
 筆管を手に持つことがでいません。」と。
ある一人が、ケ儼に言った。
「既に書くことができないのだから、帰還命令を。」と。
結局、早々に、古は還されることになった。

(冥途から戻ることに。)
すると、どこかの坑の中に落とされ、目が覚めたのである。
そして、病に罹ってしまい、右手がついには麻痺してしまった。


下級官僚の仕事は思った以上に神経を使う大変な労働で、全く面白くもなかったりするものだが、家族との生活のためには致し方ないし、几帳面に仕上げなければ一族に迷惑がかかったりもするから、一所懸命な仕事ぶりに徹するのが普通。
奉職時で終わりかと思いきや、死んでからの世界でも、その仕事が待っていたのである。
余りといえば、余りのこと。

この手の話はいつの世でも珍しいものではない。

好きでもない細かな仕事を続けていると、日々のストレスが溜まって体に異常をきたす時が必ずやってくる。仕事の場から離れた私生活では、ストレス発散のために不健康になりがち。
よくあるのは、血管がボロボロになって発生する心筋梗塞である。血管を塞いでいるものが時に流れることもあり、脳に行けは脳梗塞だ。
このお方もそんな梗塞に襲われたのであろう。しかし、奇跡的に復活。
脳梗塞の後遺症が残ってしまい、右手が不自由になってしまったのである。

成式は生物観察力が卓越しているが、仕事場での人々の様子についても、問題意識を持って見つめていたことがわかる。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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