デ ファクト・スタンダードの動きを見ればわかるが、技術的に優れているものが、市場を制するとは限らない。一端市場がロックされてしまうと、代替に要する手間やコストがあるため変化が起こり難い場合があるからだ。
一方、「これは素晴らしい技術だと言われて、先進的な人々から絶賛されていても、意外にも市場は拡大せず、人々の熱意も急激に下がる場合もある。
ハイテクや新規応用の製品の場合、このような事態になることが多い。それでは、どのように「虎の子」の新商品・サービスを市場に展開すべきか?
なんといっても、新製品の訴求ポイントが受け入れられ、浸透ポテンシャルがあるかをじっくり見極めることが肝要だ。
先進的技術が用いられている製品の場合、試作品配布や上市直後は、「仲間うち」の興奮が生み出されることで、熱狂的な評価を得ることがある。普及に手を貸してくれるユーザーまで登場することがある。しかし、こうした応援が、本格的市場の立ち上がり期のコア顧客であるアーリー・アダプターへの急速な普及に結びつく保証はない。本格的に利用を考えるユーザーは冷静であって、決して新しいものに熱狂することはない。この層に受け入れられるのかの検討次第で、市場展開の巧拙が左右されるといってよい。
統計的データの実証研究結果に基づく結論ではないが、ハイテク製品の展開を見ると、初期に訴求力が衰えるか否かの結節点となる時期がある。これ以前は、「新しい」ということで飛びつく人が多いのだが、話題が広まると同時に、製品や市場利用上での問題が発生する頃である。
この関門を通過するには、市場をじっくり眺め、アーリー・アダプターがどのような基準で購買するのかを分析する必要がある。初期に応援してくれる人達は、多少の欠点があっても、時代を切り開くポテンシャルがある製品を率先して使ってくれるが、本格的利用者は慎重な態度である方が普通だ。率先して利用するのだが、リスクを感じると購入しない。間違いなく期待するベネフィットが得られることを確認できないと、購入しないことが多い。これは、宣伝や情報リーチの問題でなく、製品仕様そのものの問題の場合もある。そうなったら、製品の作りなおしは必須である。無理をすれば市場は潰れる。
この後の展開戦略は、どのアーリー・アダプターから入り、どのように対象市場全域に広げるかのシナリオ作りといってよい。訴求を急速に成熟させることで、深く浸透することが可能なユーザー・セグメントを発見するのが、コツである。場合によっては、魅力が薄そうなニッチ分野を選ぶ方が効果的なことがある。これで一点突破に成功すれば、そのあとの、全面展開は比較的楽である。