リーダーシップ発揮とラーニングプロセスの確立


 イノベーションを創出の基盤はシステム思考、パーソナル・マスタリー、メンタル・モデル、共有ビジョン、チーム・ラーニングの5つに集約できると、看破したのはピーター・センゲだ。日本人にとっては、驚くような指摘内容ではないが、「それなら、こうした原則を活かしてどのようなマネジメントをしているのだ?」と問われると、大多数の企業は答えられないほど、お寒い現実がある。
 変化が激しく、産業構造の激変が予想されるなかで、新しい事業の柱を構築できるかどうかが、企業の盛衰を左右することは明らかだ。大胆な目標を掲げて飛躍を狙うべきだろう。
 この場合、従来からの事業開発パターンを踏襲するのでなく、企業文化を一変させるような挑戦的な動きを開始すべきだ。少なくとも、「イノベーション創出」を狙うことを明確に打ち出す位の熱情は不可欠といえよう。といってもスローガンだけで、現実は改良路線を歩む場合も多いので、狙うべきレベルを明示化しておく必要があろう。革新的でない事業案は採用できないような、評価視点を前もって明らかにしておくのである。
 日本企業のチーム・ワークは素晴らしいと語るマネジメントもいるが、現実は酷い企業が多い。

 事業開発のチームの組織など、ほとんどの企業がプロジェクト・チームの体さえなしていない。
 名称がプロジェクト・チームであっても、その実態は関係者の懇話会のような組織や、業務を機能組織別に割り振って進捗状況の情報交換をするだけの組織だったりする。少なくとも、課題を一致させて、その目標に邁進するというのがプロジェクトなのだが、個別目標をチームで調整しあうという体制で満足しているのだ。
 重要なことは、なんのために進める事業開発なのかという思想を一致させ、ビジョンを共有して、チームとして活動を進めることである。
 こうしたチーム活動が始まれば、企業変革のリーダーシップも発揮できよう。

 事業開発チームさえ満足に動かないのに、変革の旗を振るマネジメントがいるが、徒労に終わる可能性は高い。「人」のベクトルを合わせるスキルを急いで磨かないと、衰退は避けられまい。
  《参考文献》
 P.M.Senge, A.Kleiner, C.Roberts, R.B.Ross, & B.J.Smith: "The Fifth Discipline Fieldbook", Doubleday. NY U.S.A., 1994
  ・翻訳書出版予定とInnovation Associationが発表しているが未出版の模様
  ・Pセンゲの大ヒット本"The Fifth Discipline"の実務版
   (こちらは翻訳書があるが、一般論すぎるので、Fieldbookの実践論の方が使える。)
  ・いうまでもなく、MITでイノベーションの研究成果として、「ラーニング・オーガニゼーション」を提起し有名に
  ・プラクティショナー達の意見を集成しているのでスタッフにはお勧め
  ・具体策をわかりやすく解説
         

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