---日本のIT戦略

            不可思議なIT後進国脱出作戦

 「今までは欧米はおろか、アジアの国々にも、IT化で遅れをとっていたが、ケータイ普及ではずみがついた。ここで状況を一挙に変えることができる。」とズレた見識を開陳する自称IT専門家が増えた。

 こうした意見は、「日本の文化と米国の文化は違い、市場特性が違うから、ITの浸透の仕方が違う。」という思想がベースになっている。---要は、携帯電話の普及率をIT化の象徴にしたいのであろう。5〜6割に達している北欧諸国の普及率ほどではないが、4割以上というのは、日本の底力と考えたいようだ。確かに米国は3割に達しないから、誰でもがこの数字を見れば進んでいると感じる。この数字で、日本もすぐに遅れをとりもどせるぞ、という主張に説得性を持たせたいのだ。

 インターネットの普及率が米国4割、日本2割という状況であっても、キャッチアップが得意な国だから、ケータイ同様に一端上向けば、あとは一気呵成に進む、と考える。パソコン普及がアジア諸国より遅れていても、政策的な後押しさえあれば、急速な普及は可能と見る。

 実は、こうした発想こそが、IT後進国状態を作り出した元凶である。IT化の指標をパソコンやケータイの普及率で議論すること自体が、時代感覚喪失といえよう。

 単に、パソコンやケータイの普及が進むだけでは、IT化の意義は薄い。例えば、多くの人が、一日数本のメールを打ったり、一寸ウエブを眺めるようになったところで、パソコンやケータイ市場が膨らむ程度の小さなインパクトしか無い。しかし、それをIT化と考える人も多い。実際、お祭り騒ぎでもよいから、ともかくインターネット接続を増やすことが重要と主張する人も少なくない。

 こんな指摘をすると、「パソコンやケータイの普及率・インターネットの普及率は意味ないのか」と曲解する人がいる。
 当たり前だが、日本以外の多くの国々では意味ある指標だ。ところが、日本では、意義が薄い。

 IT化の第一段階はデータ通信量の急速な増加である。機器の普及率ではない。この段階に突入していれば、あとは機器の普及率が浸透の鍵を握る。
 データ通信量が爆発的に増えだし、この膨大なデータにアクセスしていくニーズが生まれるから、機器が普及する。機器の普及がさらなるデータ通信量の増加を招くという、雪崩現象が起きる。だからこそ、機器の普及率に意味がある。
 逆は考えにくい。機器が普及するだけでは、急速にデータ通信量が増えるとは言えないからだ。

 日本には、未だに、データ通信量の急速な増加兆候が見られない。従って、日本で、家庭へのパソコン普及を無理矢理進めても効果は限定的といえよう。

 それでは、日本のIT化の指標を何で見ればよいのか?

 いうまでもなく、音声通信とデータ通信の比率である。データ通信量が音声通信量を凌駕するような流れが始まったどうかが、IT化のメルクマールである。この観点では、iモードが、IT化に大きく寄与したと評価してよいか、疑問が残る。ケータイは音声通信量も劇的に増やしたからである。
 データ通信量が爆発的に伸びている国だけが、携帯電話の普及によって、革新の芽が次々と生まれる。そうでない国では、孤立した特殊なケータイ文化が醸成される可能性が高い。
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