---「情報革命」神話の見方 その3

            日本のIT投資は生産性向上に寄与できない可能性が高い。

 ITの技術革新が生産性向上に大きく寄与したとはいいがたい、と主張する著名な学者がいる。

 これに対して、そんなことが有る筈がないという反論が多い。そして、産業界も、ITで生産性が上がっているからこそ米国経済が好調なのだ、と考えている。確かに、IT技術を登用したことで、米国の長期的な好景気が実現していると思う。しかも、ミクロでみれば生産性が上がっている場面も多い。一部の偏屈な学者の意見として片付けがちだ。
 しかし、学者の分析というのは、冷徹なものである。データ源がおかしいならともかく、そうでないなら、生産性向上はそれ程で無い可能性が高いのである。どうしてこのような結果になるのかを考える必要があろう。

 実は、簡単に説明でき、実感で納得できる理由がある。

 IT技術の基本は、デジタル・データ処理の大量・高速処理化である。このスピードがとてつもなく速いことが、革命的なインパクトを与える訳だ。
 ところが、処理は速くなるが、生み出すデータ量の増加も凄まじい。とてつもないデータが流入してくれば、簡単に処理などできないから、生産性は低下する。データが多すぎて、それぞれの段階で、意思決定が遅れることになる。確かに、余計な業務が増える。プラス効果もあるが、マイナスもかなり大きい筈だ。

 要するに、IT化が進むと、爆発的なデータ膨張がおこる。これに対応するのに労力がかかる。従って、データ処理が合理的に進む仕組みは極めて重要なのである。単純にIT投資が進むことが、生産性向上に繋がる保証はない。---これは、企業の実感とも合う。
 日本企業のIT投資のほとんどは、自社独自の仕組みをサポートするものだ。当然ながら、合理的な導入ではない。爆発的に増加するデータに対応するのに必要な新技術登用が簡単にできないからだ。
 欧米企業も独自の仕組みは持つがシステムの骨格部分はパッケージ(汎用)を用いる。合理的に考えれば、当然のことだ。従って、このようなパッケージは標準化する。企業独自の基本ソフトでは、競争できないのである。

 日本は、こうした状況にない。企業独自の体系をこわすことができないため、世界標準になっているソフトでさえ導入できないのである。
 この状態で、IT投資を増やすのだから、独自システムを大型化する以外にない。生産性向上には寄与しない、没落のためのシステム構築に邁進している可能性さえある。

 IT投資が増えたから日本企業は安泰、と指摘する評論家もいるが、実態を知っているのだろうか。

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