---日本のIT戦略

  表層的なIP電話の議論が多すぎる。

 050の電話番号配布で、メディアを中心に、電話がインターネットに変わると騒ぐ人が増えてきた。その一方、110番もかからず、安いだけのIP電話は固定電話を代替できない、と主張する人も多い。
 実は、この議論はかみ合っていない。その原因は、市場の見方にある。

 例えば、日経マーケット・アクセスは、個人向けIP電話サービス加入者が2002年6月末で212万人、企業向けが400社程度と発表している。(http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/inet/208863) 実は、この数字では、電話のIP化実態はよく見えない。

 IP化潮流を読むなら、インターネットプロトコル網対電話回線網という視点が重要だ。この視点自体は単純だが、実際の市場は複雑でわかりにくい。電話回線網がISDNを土台にしているからだ。ISDNはデジタル網だから、この上にインターネットが乗る。このため、ISDN型のIP電話と、IP網の「純」IP電話が並存している。利用者から見れば同じIP電話だが、中味は大きく違う。

 従って、プロトコルで普及状態を見ないと潮流は読めない。
 ISDN系IP電話はH.323というITUの標準を用いる。映像、音声、データ、送信等がセットになっており、複雑、かつ厳格な超ヘビー規格だ。ビデオ会議もこの規格の下で動いている。今稼動している企業内IP電話のほとんどはこのタイプである。従来の電話よりは安価だが、ISDNでしか通用しないから発展性に乏しい。
 一方、インターネット型プロトコルはSIP(Session Initiation Protocol)だ。生まれた時からIP電話を目指したから、構成が簡素であり、ウエブで用いるHTTPと類似で使い易い。こちらは、Internet Engineering Task Force(IETF)の下で定まった。従って、柔軟な規格であり、発展途上と見てよい。

 両者は全く違うものだが、IP電話の利用者にとっては変わりはない。安くて高品質ならどちらでも良い、と考えがちだ。しかし、それは大きな間違いである。
 SIPは確実に標準の地位を確立しつつある。携帯電話はSIPをサポートしたし、ウインドウズXPにも搭載済みだ。
 プロトコルの統一が進めば、固定電話機やケータイ、パソコンやPDA、新機軸の機器、なんであろうと繋がるようになる。
 こうした流れから、新産業が生まれる。「純」IP電話の意義はここにある。企業が飛躍のチャンスを求めて、脱ISDN、「純」IP電話へ進むのは当然の流れである。

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