---日本のIT戦略

  e-Japan戦略目標未達は確実だ。

 2000年11月にIT基本戦略が発表されてからほぼ2年が経過した。(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/index.html)

 インフラ設備つくりに焦点をあてただけで、ITで何を実現するのか内容が不明な方針だったが、電子商取引の浸透を打ち出したので、それなりの意味はあろう、と評価した人も多かった。確かに、電子商取引普及が遅れればグローバル競争に敗退する、との問題提起役は果たしたといえよう。
 しかし、電子商取引についての具体論や、望ましい構造の議論はなかった。

 2001年のe-Japan戦略も、この基本目標確認に過ぎない。

 2002年のe-Japan重点計画でも、重点政策5分野を再確認した。
  ・ 高度通信ネットワーク形成
  ・ 人材育成
  ・ 電子商取引促進
  ・ 行政/公共分野の情報化
  ・ ネットワーク安全性/信頼性確保

 電子商取引に関しては、2001年の倍に当る、B2B70兆円、B2C3兆円との2003年目標数値を打ち出している。このような数字では実感がわかないが、「2003年度中に、中小企業のおおむね半数程度がインターネットを活用した電子商取引等を実施できることを目標」との記載はよくわかる。(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/020618-2-3.html)
 この目標に向かって、基盤整備を進めることになる。

 ところが、具体的施策は陳腐な内容の羅列だ。
  ・ 研修/セミナーの実施とアドバイザー育成/派遣
  ・ 標準ソフトウエアとシステムの開発/普及(共通基盤整備)
  ・ 情報提供事業の充実
  ・ IT貸付等の支援
 これだけでは、電子商取引が急速に普及する理由は全くわからない。

 批判はさておき、現実にB2Bは進展しているのだろうか?

 実務家から見れば、大企業では、進展どころか、停滞に近い。
 大企業は、昔からEDIの仕組みを活用している。企業間を専用線で結んだシステムであり、日常的に大量のデータが行き交っている。このシステムを、インターネットに移行させる動きはおきていない。移行費用が発生する上、メリットも乏しいからだ。企業の基幹部分のIT化が遅れているから、システムは互いに孤立していて、インターネット化しても合理的な動きには繋がらないのである。
 といって、EDIシステム以外の商取引業務は、多種多用な小規模商取引の世界である。こちらも、インターネット取引に移行してメリットがあると考える人は少ない。取引企業の数が多いから、単純に電子取引で処理が簡単になるとも限らないのである。今もって電話/FAXの世界が続いている。

 一方、中小企業のB2Bも、ほとんど進展していない。
 こちらは、大企業の系列でない限り、EDIとは無縁である。高額費用が発生する専用線を導入するだけのメリットがないからである。しかも、日本の大企業は各社独自のEDI規格を用いるから、顧客が複数の場合は、導入は事実上無理である。
 大企業がEDIをインターネットウエブ型に変えれば、中小企業も利用ができるが、その動きは微弱だ。中小企業が自ら動きだすことはできないから、進展が遅いし、ウエブ型利用そのものに消極的だ。
 欧米で活用が進んでいる、部品調達ネットワークやマーケットプレースのようなB2Bの仕組みも、取り組みはあるが、中小企業にとって魅力あるシステムが登場しつつあるとは言い難い。形態は似ていても、現実にコストや納期の点でメリットがある仕組みになっていない。業界全体の調達の仕組みも立ちあがりそうにない。

 といっても、僅かだがB2Bの動きはある。
  ・ 大手メーカーのウエブ調達窓口
  ・ 一部の汎用商品を対象としたマーケットプレース
  ・ 海外で構築された業界調達ネットワークの拡張

 しかし、いずれも普及の兆しあり、とは言い難い。

 ウエブ窓口は流行っているが実際は機能していない。発注の大企業側から見れば、成功と考えがちだが、受注の中小企業側は全く逆の評価だ。ウエブを年中閲覧する必要に迫られるから当然だ。実情からいえば、そのような手間をかけてまで検討する意味は薄い。合理化可能なのは、大手企業側のほんの一部の業務だけで、中小企業側は逆に対応業務量が増える。その上、リードタイムは従来より長くなるのが普通だ。
 マーケットプレースも、EDI代替に進む力はない。
 業界ネットワークも、所詮は、海外調達の必要性があるための参加でしかない。中小企業は、既存の取引関係を優先する。新たな取引関係も、電子商取引ではなく、既存筋の紹介を基本としている。そのため、電話/FAX/Eメールでの取引になる。

 現状から判断する限り、新たな施策が無いなら、B2Bは全く進展しまい。ADSLが廉価で使える環境が整備されたのにも係わらず、未だに革新的な動きがない。
 このままなら、2003年に中小企業の半分以上がインターネット取引に参加との目標は、間違いなく未達に終わるだろう。

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