---デジタルメディアの進展

  テレビ主導のデジタル家電構想の挑戦が始まった。

 2003年1月、恒例のInternationalCES(Consumer Electronics Show)が開催された。今までで最大規模になったという。変化が予想されるデジタル家電の将来を占う展示会だから、人々が大挙しておしかけたと言えそうだ。

 オープニングスピーカーも業界リーダーの揃い踏みである。
 8日にはマイクロソフト会長のBill Gates、9日にはソニー社長の安藤国威、デル・コンピュータ社長のMichael Dell、インテルCEOのCraig Barrett、10日にはTI社長のTom Engibous、等であり、ビジョナリー・リーダー講演として設定された。(http://www.cesweb.org/for_press_analysts/default.asp)

 CESはもともとは家電の展示会だが、ソニーを除けば、IT業界の人ばかりだ。完璧なデジタル家電時代といえよう。
 そして、この場で、デジタル家電の新時代像も提起されたようだ。

 ZDNNニュース(リポーター:本田雅一)によれば、安藤講演は、ブロードバンド時代の主役はテレビ、との考え方を明確に示したという。将来の生活の豊かさのイメージを与えたことで、聴衆の期待にも応えたらしい。その一方で、Bill GatesやCraig Barrett講演には失望感を抱いたそうだ。(http://www.zdnet.co.jp/news/0301/10/nj00_sonyando1.html)
 おそらく、現実のエンタテインメントを追求してきた人の話しと、パソコン技術の話しの、迫力差だろう。

 この場で、ソニーから、家電Linux構想が明らかにされた。長らく語られてきたにもかかわらず、さっぱり進まなかったプロジェクトだ。
 さらに、異なるCATV伝送方式を統合する技術開発成功の発表も行われた。
 ようやく、ソニーがデジタルテレビでリーダーシップを図る動きが本格したようだ。

 ソニーが提起した、テレビを核とするデジタル家電構想は確かに魅力的だが、理想論すぎるのではないだろうか。オープン規格への転換は必要だが、タイミングが遅すぎる。
 標準化を狙うといっても、Linux技術者の数が少なすぎるからだ。現状では、Linuxでの開発はコストが嵩む可能性が高い。しかも周辺機器メーカーがLinuxに対応するとの保証はない。マイクロソフトは、こうした状況をにらんで、OS価格やソフトのライセンス料を下げると予想される。
 家電メーカーの連合だけでLinux化がスムースに進むとは思えない。
 いまや、家電大手でなくとも、高度な技術が必要なデジタルテレビや著作権保護技術を除けば、先進的機器の開発は可能である。極めて難しい道を選んだといえそうだ。

 さらに問題なのが、テレビ中心の構想である。デジタルテレビ中心の世界が開くだろうか。
 例えば、CATVのデジタル化だけでも、かなりの投資が必要となる。収益向上につながるとは思えないデジタル化が進展するだろうか。しかも、消費者には、高額なテレビの購入意欲は低い。
 パソコンより、デジタルテレビの方が圧倒的に高額商品なのである。しかも、テレビ放送のコンテンツがデジタル化で格段に魅力的になるとは思えない。高精度化だけでは、テレビ中心の家庭ネットワーク化が進むことはないだろう。

 一方、マイクロソフトのBill Gates会長講演は、評判が今一歩だったらしい。インターネット対応「SPOT」搭載の腕時計が発表されたが、魅力を感じた人は少ないようだ。ケータイ同様のARMプロセッサコアを搭載したICを用いて、FM電波でネットワークに接続するものらしいが、電池は3日間しか持たない上、分厚い製品だから、当然の反応だろう。
 しかし、こちらの提起の方が、インターネットの本質をとらえた、タイムリーな動きといえるのではあるまいか。成熟化した時計産業の変身もありうるし、FM放送を使うネットワークを狙った点も注目される。

 デジタル家電の新市場構築に必要なのは、魅力的なコンテンツの登場である。
 ところが、テレビ放送業者には、デジタル化に伴う新しいアプリケーション創出や新規参入を歓迎する姿勢は感じられない。しかも、デジタルテレビは何をするにも高コストである。新しい取り組みが始まりにくい産業といえる。
 一方、ラジオ放送業界はまだ未知数である。こちらはデジタル化したら、インフラには何が流れるかわからない。ローカルFM局にとっては、新サービス開始のチャンスが豊富にある。デジタルラジオ化はテレビとは違い桁違いな少額投資で実現可能だから、新規参入も容易だ。
 新しいデジタルインフラを作り、挑戦を呼び込むのがインターネットのダイナミズムと考えるなら、FM放送に注目するのは当然といえる。

 こうして見てみると、テレビ放送業界に依拠する構想と、新産業勃興構想の戦いが始まった、ともいえそうだ。

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