---車IT化の衝撃

  自動車LANの競争(1:ボディ)

 自動車技術は日本強しとの声が、そこここから、聞こえてくる。オピニオンリーダーが、次世代技術についても、日本は圧倒的だと語っているからだ。

 この構図は、80年代の半導体産業とよく似ている。日米半導体摩擦時点で、日本企業のデザイン能力欠落はわかってしまった。先端を走っていた製造プロセス技術についても、コストを考慮した技術構造上の優位性を狙うのではなく、個別要素技術磨きばかりしていることも判明した。技術マネジメントの実務家は、これで大丈夫か、と指摘した。
 ところが、日本強しの大合唱で、この声はかき消された。「欧州の半導体メーカーは独自展開能力なし」とか、「米国DRAMメーカーは破綻する」と語った業界人もいた位だ。結果はご存知の通りだ。
 そして、そのような人達が、今度は、「日本の自動車メーカーの底力は比類無し」と語り始めたのである。
 思わず批判したくなるが、時間の無駄だろう。

 さて、自動車技術を考える場合は、一番最初に見るべき領域は、ITといえよう。IT技術は、蓄積したスキルが競争力に直接的に効いてくるし、これからの技術開発体制を一変させる可能性が高いからだ。・・・この観点から、車搭載通信インフラにおける技術競争を一瞥してみよう。

 通信用光ファイバーの初搭載車は、技術の粋を極めたトヨタセンチュリーと言われている。流石、トヨタだと言えなくもない。
 しかし、先進的な挑戦に映るが、これだけでは技術的にさしたる意味はない。銅線で発生する問題が解決できたとか、超コストダウンを実現した訳ではないからだ。もともと、少ない情報量の通信なら、光ファイバー利用の必然性はない。
 光ファイバーはともかく、同じ1980年代に、車のIT化は極めて速いスピードで進んだ。

 最初に搭載されるのは、常に個別制御の仕組みで、通信は不要である。しかし、制御対象が増えれば、分散制御可能なLAN化が進む。長期的に見れば、LAN型の方が、高機能な制御が低コストで、しかも迅速に開発できるからだ。この発想のLAN規格として、1986年に登場したのが、Robert Boschの「CAN」(Controller Area Network)である。マイコン化が早かったこともあり、欧州ではすぐに普及した。(仏車が用いている「VAN」は「CAN」ベース)[Vehicle Area Network、ISO 11519-3]

 「CAN」の先行で、欧州車はIT化がいち早く進んだのである。
 一方、米国ではフォードが「J1850」を推進した。しかし、グローバル展開を考えると、結局のところは「CAN」主体にせざるを得ない。
 日本は予想通りの独自規格だった。[トヨタ自動車「BEAN」](Body Electronics Area Network)

 この分野は、もともとは、ウインド/シートの位置設定、ドア管理、ワーパーやライト操作のような、単純な内容が主体だ。自動車の基幹機能を左右するようなものは含まれないから、LAN規格の違いが直接技術競争力に大きな影響を与えることはない。要するに、この分野だけを見れば、比較的ローテクなのである。
 とは言うものの、通信頻度は少ないが、環境測定情報を診断して、スイッチに繋げる機能が搭載されてくる。情報量増大と共に処理の高度化が必要になる。この進歩についていくために、開発体制は膨れあがる。
 しかも、ヒトとのインターフェース部分が多いから、仕様変更が頻繁だ。従って、マイナーな規格に固執していると、高コスト化しかねない。しかも、ソフトとはいえ、マイコン化が必須条件だから、マイナー規格ではIC開発側もコスト負担に耐えられなくなる。

 一方、標準規格なら、開発費用が安価で新機能追加も簡単である。開発の社外化も問題なくできる。
 「CAN」標準化は当然の流れである。[1991年に低速規格化:ISO 11519-2、1993年に高速規格化:ISO 11898](http://www.iso.ch/iso/en/CatalogueDetailPage.CatalogueDetail?CSNUMBER=20380&ICS1=43&ICS2=40&ICS3=15)

 こうなると、この分野(ボディLAN)では、「CAN」で先行した欧州系メーカーの優位は明らかと言えよう。 ・・・ 

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