---車IT化の衝撃

  自動車LANの競争(2:制御)

 業界で、ボディ分野と呼ばれる、比較的ローテクなLANでは、欧州系の「CAN」が標準の地位を占めた。この流れに抗した動きをすれば、競争力を失いかねないから、流れは決したといえる。
 しかし、この技術が、自動車LANのすべてをカバーしている訳ではない。

 自動車の本質は、あくまでもエンジン/ブレーキ制御である。この分野は、運転性能や安全性に直接係わるから、リアルタイムで高信頼性が不可欠な通信になる。ボディ分野とは、全く違う技術体系といえる。

 とはいうものの、LANという点では技術基盤は同一だから、統合的に考える方が便利である。
 そのため、「CAN」の拡張展開という道がありうる。[「CAN」の対抗規格「J1850」や「BEAN」は通信容量が10k程度だが、「CAN」は1Mまで伸ばしたので、リアルタイム高速化可能]
 ・・・この拡張策は、技術マネジメントの観点からいえば、コア技術の使い回し政策にあたる。
 自動車に限らず、FA分野の基本プロトコルとして利用が広がれば、「CAN」技術者のコミュニティを成長する。イノベーション発生確率も高まるし、開発コストの圧縮や開発期間短縮も可能となる。「CAN」に好循環が生まれる。

 しかし、リアルタイム通信はタイミング技術の塊だから、本質的には、ボディ分野で用いる「CAN」とは異なる技術体系といえる。遅延時間を規定できるタイム・トリガー型(TTMA)の技術が必要となるからだ。そのため、TTTech Computertechnikの「TTP」、「CAN」の拡張展開規格「TTCAN」が生まれた。(http://www.tttech.com/)
 明らかに、技術の断絶的発展が発生している。従って、新しい動きが起きておかしくない。

 その動きが「X-by wire」思想をベースとした規格である。タイム・トリガー型に進むなら、電子制御ブレーキや電子制御ハンドルなどの機械制御全般を電子化できるという考えだ。
 こうした規格を使えば、機能性向上が容易に図れるし、柔軟な設計も可能になる。しかも、機器間の接続に要するハード部品を大幅に減らすことができる。このためモジュール化による大幅なコスト削減が見込めるし、設計柔軟性があるから、イノベーション創出に結びつけることもできる。技術体系の転回点を迎えているといえよう。
 実際、自動車部品大手Delphiは「X-by wire」で先頭を走るべく、活用を進めている。(http://www.delphi.com/automotive/nextech/products/xbywire/)

 さらに、高信頼性の象徴である、エアバックの制御分野でも、新しい規格が生まれた。BMWの「Byteflight」である。そして、この規格の発展形では、DaimlerChryslerも参加して「FlexRay」となる。ハード上でタイミングを実現でき、極めて信頼性が高いので、支持メーカーも多い。(http://www.flexray-group.com/)

 このように新規格を提起できる力量こそが、技術力を示す時代といえる。
 この認識を欠く企業は、世界の流れから次第に孤立する。IT分野では、孤立すればイノベーション創出ができにくくなる。変化が激しいため、ひとつの要素技術だけ飛び抜けていても、先進的な技術を揃えることができないため、力が発揮できないのだ。
 この観点からいえば、欧州系企業の技術優位は歴然としてきた。

 特に注意すべきは、プロトコル規格とはソフトであり、これを動かすプロセッサを無視して考えられないという点だ。IT機器のOS組み込み用プロセッサは、ARM(Advanced Risc Machine)ベースが主流になりつつある。(但し、日本には異なる流れもある。)このプロセッサとプロトコルを搭載したICを使う仕組みができつつある訳で、ここでスキルを蓄積する流れが始まっているといえよう。
 この流れから外れれば、マイナーな地位に陥落する可能性がある。車メーカーがIC本体まで開発する訳にはいかないからだ。

 欧州企業は、先進的技術を取り入れ易い仕組みを作ることで、制御LAN分野でも一歩先を走っている。 ・・・ 

   過去記載の
   ・「自動車LANの競争(1:ボディ)」へ (20030122)

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