---「e-ビジネス」の時代

  日本企業はe-ビジネスどころではない。

 日本企業はコンピュータ2000年(Y2K)問題を軽視しており、このままでは、とてつもない被害を被る、と叫んでいたオピニオンリーダーがいる。
 結果は、大山鳴動鼠一匹だった。

 このオピニオンリーダーが、最近は、RFタグを題材にしているという。この分野では、日本企業にも勝ち目がある、と主張しているそうだ。この話しを、嬉しそうに、大企業の経営幹部が語るから、驚きである。一回で懲りず、何回でも「お話」を拝聴したいようだ。

 どうして、こうなるか考えてみた。

 すぐに思いつくのは、オピニオンリーダーも支援者も、欧米崇拝者である点だ。欧米情報を重視するのは、明治時代以来続く日本の伝統でもある。
 Y2Kの際も、あくまでも欧米企業の対処状況との比較での警告だ。日本企業が抱えている具体的なリスクを指摘した訳ではなく、欧米企業経営者の危機感を知らせただけである。
 欧米が先行し、日本後追いというパターンなら、こうした情報は役に立つ。しかし、後追いでは奏効しない時代に、欧米崇拝でもなかろう。

 どうも理由は他にあるような気がする。
 日本が抱えている問題を深く議論したくないのではなかろうか。欧米と日本の表面的な差の議論に熱中させて、日本企業の実態分析を避けている、と解釈することもできる。
 例えば、日本企業がY2K問題を軽視し、欧米が重視している理由は分析して欲しくない。日本企業の実態を知らないオピニオンリーダーを担ぎ、日本の対処が遅れていると大騒ぎしてもらう方がよい。

 それでは、隠したい点はなにか。・・・「経営の保守性」である。

 実は、今もって、ほとんどの日本企業で、「基幹系/業務系」と呼ばれるシステムは旧態依然たる仕組みで運用されている。1970年代のコンセプトを今もって続けているのだ。
 特殊なOSを搭載しているメインフレームで(場合によってはオフコンと呼ばれるものも)COBOLで記載したプログラムを動かしている。1950年代に生まれたCOBOLが未だに現役で、しかも主役を下りていない。
 一方、欧米では、安価で柔軟、かつインターネット・プロトコルに対応できる、UnixやWindowsのサーバ/クライアントの世界に突入した。状況は全く違う。
 日本企業は、古い仕組みを変えようとしないのである。(「基幹系/業務系」がシステム部門のメイン業務である。UnixやWindowsを用いる「情報系」は隔離されており、マイナーな付随業務と見なされている。)

 欧米がY2Kを恐れたのは、COBOLのプログラムであり、UnixやWindowsにのるプログラムではない。前者は、古くて中味がどうなっているかわからない上、COBOLに対処できる技術者がいない。ブラックボックッスを抱えた経営者が危機感を持つのは当然である。
 一方、大半の日本企業では、システム部門にはUnixやWindowsが理解できる人はいなくても、COBOLの専門技術者は溢れかえるほどいる。Y2Kで問題が発生しても、難なく対処できるのだ。

 システム部門の最大の業務は、新しいニーズに応えて、プログラムを肥大化させる仕事なのである。UnixやWindowsのように柔軟性もなく、通信機能もない、どうにもならない過去の資産維持のために仕事をし続けている。「優秀」なCOBOL技術者を大量に抱えているのであるから、日本の経営者がY2Kを恐れる筈がない。

 このような遅れたシステムを、いつまでも続ける理由は単純だ。今のままいじらなければ、安全確実だからである。
 当然ながら、ITを活用した抜本的な制度変革はできない。他のシステムとの統合も難しいから、合併したりすると、必ず問題が発生する。事業変革には向かない仕組みなのである。
 つまり、「現状維持の経営」に徹している訳だ。しかし、外部にそのように映ってはまずい。なるべく派手に、トレンディな話題に目をそらしたいのだ。これが、Y2Kであり、RFタグである。

 言うまでも無く、RFタグの普及は、取引の電子化進展を意味する。理屈では、末端市場の電子情報が企業のシステムと繋がることになる。日本企業にそのような仕組みが構築できるだろうか。

 すでに述べたように、日本企業の「基幹系/業務系」はCOBOLのプログラムが動いている。特殊OS搭載メインフレームである。そのままでは、インターネット・プロトコルで繋がらない。いじるくらいなら、UnixやWindowsに変更するほうが楽である。しかし、その動きは、兆しさえない。
 RFタグと端末だけは立派なものが入るが、企業内は古い仕組みのままだ。
 一方、欧米はすでに仕組みを変えているし、アジア各国はもともと古い仕組みなどない。

 日本は、どう見ても後進国である。そして、それを隠し続けている。
 にもかかわらず、RFタグで世界に先鞭をつけ、先を走るのだと平然と語る。

 日本のIT業界に、魔術でもあるのだろうか。
 日本のコンピュータ企業は、21世紀になってから、メインフレームの新製品を上市する位のセンスだ。メインフレームの一大革新でも夢想しているのだろうか?

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