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  Tablet PC普及は先の話

 2002年11月、手書き入力OS「Windows XP Tablet PC Edition」搭載パソコンが登場した。そして、2003年3月、業界の予測を超す売れ行きであるとのニュースが流れた。ノートPC市場の5%を占めることになるのではないかという専門家の発言も引用され、沈滞するパソコン業界にとっては最近稀な朗報だった。(http://zdnet.com.com/2100-1103-986350.html)
 しかし、発売半年たっても、周囲で「Tablet PC」が欲しいとの声を聞いたことがない。売れ行き好調というが、一過性の現象ではないだろうか。

 この分野はペン・コンピューティングと呼ばれており、歴史は長い。その結果、ファン層が形成済みだ。(http://www.pencomputing.com/)
 新製品が登場すれば、間違いなく、こうしたファンが購入に走る。
 だが、ペン・コンピューティングが広く受け入れられているとはいえまい。しかも、「Tablet PC」が一般層に浸透できる位の訴求力を持つようになったとも思えない。その上、高額商品なのだ。売上を伸ばすとは考えにくい。

 歴史を見れば、わかる。

 ペン・コンピューティングの発祥は、80年代の「GRiD」にさかのぼる。(http://www.microsoft.com/insider/opsystems/tabletpc_history2.asp)
 「Microsoft DOS」をOSとしたハンドヘルドコンピュータに、手書き認識エンジンを搭載したものだ。当初は、極めて高価なパソコンだったから、一般受けする製品とは思えなかった。これを洗練させたのがCasio/Tandyの「Zoomer」である。この辺りが、基本製品といえよう。
 ところが、この製品は、我々の記憶から消えている。ペンコンピュータでなく、ハンドヘルドコンピュータとして訴求したのと、同時期(1993年)に「Apple Newton」が華々しく登場したからである。
 「Newton」は、メモやスケッチを残せる点を訴求しただけでなく、PDAコンセプトを打ち出した。このため、製品認知度が一気に急上昇した。ペン専用のインタフェースも極めて先進的なものだった。
 にもかかわらず、市場から消えたのである。(GO Computingも同様な道を歩んだ。)「Newton」と繋がる「MagicLink」(2002年に清算したGeneral Magicが開発)も大いにもてはやされたが、やはりビジネスには結びつかなかった。熱狂的ともいえるPDAの先進技術フィーバーはすべて空騒ぎで終わったのである。

 しかし、PDAコンセプトが死んだ訳ではない。「Palm」や「Pocket PC」が大きな市場を切り開いたからだ。こちらは、保守的な入力技術しか登用しなかった。マニアックな高度な製品ではなく、コンセプトの要件を満たす簡素で安価な製品を投入したことが、ビジネスの成功に繋がったのである。

 こうして、ペン・コンピューティング分野は一応定着した、と言えそうに思うが、それは間違いである。PDAは掌サイズでポケットに入ることがポイントであり、そのための入力手段が小さな細い棒(スタイラス)しかないだけの話しである。
 ノートブックサイズのパソコンが手書き入力にならない限り、ペン・コンピューティングが定着したとはいえないのである。

 この観点で見れば、ペン・コンピューティングは定着どころか、一般にはほとんど浸透していないと言える。
 Microsoftは「Windows for Pen Computing(Windows 3.1)」や「Penservices for Microsoft Windows 95」といったペン・コンピュータ向けOSを開発してきたし、ペン・コンピューティング・パソコンも登場はしてきた。しかし、存在感はほとんどない。
 例えば、三菱電機は「AMiTY」を上市したが、ほとんど消えさっている。(http://www.mitsubishielectric.co.jp/giho/9707/9707103_b.html)
 富士通の「FM Pen Note」は健在だが、特殊用途の市場で受け入れられただけである。(http://www.fmworld.net/biz/fmv/product/hard/pent3w9/index.html)

 要するに、ペン・コンピュータは未だにキーアプリケーションを欠いているといえよう。どうしてもペン入力でなければこまる用途を発見しない限り、ヒットは望み薄と考えるべきだろう。マニアを除けば、ペン入力の魅力は大したものではない。にもかかわらず価格が高い。浸透する筈がないのである。

 どう考えても、入力ハードが安価にならない限り、「Tablet PC」が大市場に発展する可能性は低い。

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