---インターネットのインパクト

  画期的インターネット・プロトコルの登場

 2003年6月、Science & Technology News Serviceが、100Gbpsの超高速でデータ転送が可能なインターネット・プロトコル「Fast TCP」をCaltechで開発中、とのニュースを流した。
 スイス米国間での実験結果によれば、転送速度は通常の3倍。10システムを投入したら、30倍が実現できたというのだ。絶対値で見れば、通常のブロードバンドの6,000倍だ。世代インターネットと組み合わせると、さらに大幅な向上が見込めるから、凄まじい技術が登場、ということになる。(http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns99993799)
 Science & Technologyは比較的広く読まれているので、中国も含め、各国で話題になっているようだ。

 この技術は、Natureでも、DVDが5秒で転送できるソフトとして取り上げられたので、関心ある人にとっては突然の話しではない。サーバ側の仕様を変えるだけで実現するため、大手ユーザーが使い始めるのではないのか、との感触を持つ人が多いようだ。(http://www.nature.com/nsu/030324/030324-7.html)

 昔から、このような技術の商用化は、膨大なデータ処理をリモートで行う必要があるリードユーザーが使い始めるかどうかにかかっていると言われてきた。その点では、おそろらくSLACのような素粒子研究部隊のデータ計算が先鞭を切ると見るのが常識だろう。実際、ここでは、Fast TCP、HighSpeed TCP、Scalable TCPの検討が行われている。(http://www-iepm.slac.stanford.edu/monitoring/bulk/tcpstacks/summary.html)

 しかし、このニュースで注目すべきは、実は技術進歩そのものではない。研究開発体制の方である。一見、Caltechだけが走っている感じを受けるかもしれないが、これは、欧米の高速インターネット協力体制が生み出した大きな成果とも言えるのだ。
 ニュースで報じられたスイス米国間の実験とは、実は、大西洋間での大量情報転送を実現しようという、欧州のDataTAGプロジェクトそのものである。もともとは、グリット・コンピュター開発の欧米間協力が背景にあり、当然ながら、米国DoEとNSFの強力なサポートも受けているし、主要米国勢も参加している。
 「Fast TCP」の実験データとは、このプロジェクトの一環としてのプロトコル試験結果なのである。 (http://icfamon.dl.ac.uk/papers/DataTAG-WP2/reports/task1/20021011-HNF.pdf)

 このテストは、ジュネーブのCERNとシカゴのStarLight間で行われた。実験ではあるが、これからのインターネット産業をリードする企業の選定プロセスと見ることもできる。使われたルータのメーカーは、Cisco、Juniper、Alcatel、(Extreme Networks)だった。

 ネットワーク構築実験なのであるから、一過性のもので終わる筈がない。こうした実験を通じて、大西洋間に大掛かりな研究ネットワークが構築されることになる。
 米国側ネットワークは、StarLightから、Abilene/Canarie/ESNET/MRENに接続し、さらにスイスのCERNやオランダのSURFnetに連なる。同時に米NewYorkと欧GEAMTが接続することで、英SuperJANWT4、伊GARR-B、仏INRIAが入ってくる。(http://datatag.web.cern.ch/datatag/documents/DataTAG-Review-Final.ppt)

 残念ながら、日本はこうした動きの蚊帳の外だ。

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