---おかしな兆候

  米国のインターネット後進国化
2003.10.8
 2003年9月、ITUのインターネット報告書が発刊された。1997以来5番目だが、今回の題名は「Birth of Broadband」だ。
 (http://www.itu.int/osg/spu/publications/sales/birthofbroadband/exec_summary.html)

 これによると、ブロードバンド浸透率のトップは韓国で21.3%だという。
 オランダ、日本、米国は、それぞれ7.2%、7.1%、6.9%で遥かに及ばない。

 興味を引かれるデータは、浸透率と購買力平価Gross National Incomeとの相関である。
 オランダや日本は世界の平均的傾向に入るポジションだ。もちろん、跳び抜けているのが韓国だ。(報告書 Fig. 3)
 収入が多くても、浸透しないのが、米国とノルウエーである。特に、米国のポジションは異常な感じがする。

 ITUは、米国は十分な競争政策を導入しないから浸透が遅れている、という見方だ。
 IT先進国、自由競争経済の旗手と呼ばれていた米国だが、その名を返上すべき時が来たのだろうか。

 その実態を素直に吐露している人もいる。David S. Isenbergだ。
 Intel Capital CEO Summitで「Four Scenarios for the Future of the Internet」を語った。ここで、今のままなら、米国はインターネットインフラで後進国になってしまうのでは、との見方を示している。
 [インターネットの5年後を考えるパネル討論:IntelのDavid Tennenhouseがモデレーター]
 (http://www.isen.com/archives/030818.html)

 確かに、その通りかもしれない。

 すでに、家庭でさえ、廉価で、イーサネット100Base-TのLAN構築ができる。無線も、IEEEが、ついにWi-Fi[802.11(g)]を標準として認定した。通信容量は100Mに向かって動いている訳だ。
 一方、幹線の光ケーブルも、巨額な設備投資による大容量化が完了済みだ。巨大な容量を実現したため、需要が全く追いつかない状況といえる。・・・お蔭で、幹線網事業者は虫の息だが。

 ところが、米国では、この両者の「繋ぎ」が問題だ。この部分の容量が小さく、ボトルネック状態なのだ。
 この解決者は誰なのか。
 まだ見えてこないのである。

 Isenbergは、4つのシナリオを提示した。
 (シナリオ1) 電話会社: 皆が電話会社がやるものと信じ続ける場合。
 (シナリオ2) 公益企業: 自社資源を使って、末端まで通信線を敷設。
 (シナリオ3) 最終顧客: インターネット・アクセス・プロバイダー経由をやめ、末端利用者が直接接続
 (シナリオ4) 独占継続: 訴訟など、様々な策を弄して新規参入を阻止し、電話会社が独占を維持

 オフィシャルには、シナリオ1である。
 しかし、産業発展を考えるなら、シナリオ3が望ましい。
 実態から言えば、シナリオ4ではないか、という見方である。

 要するに、米国では、「繋ぎ」部分は、金がかかる割にすぐに儲からない可能性が高いから、なかなか解決しない訳だ。

 今の状態なら、米国の地位はさらに後退する。
 そのお蔭で、米国のインターネット関連産業は低迷する可能性が高そうだ。そうなると、米国はインターネット後進国化するかもしれない。

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