---Linux時代の幕開け   

  TRONによる露払い
2003.11.12
 家電用OSの候補は、WindowsとUnix(Linux)だけ、と述べた。
   → Linux家電の登場 (20031110)

  ↑ カット http://www.nagai.net/icon-kan/peng02/penfood.html


 このような発言をすると、そんなことがある筈が無い、とTRON支持者は猛反撥すると思う。
 開発者自らITRONの利用状態を喧伝し、TRONの将来性を訴えているからだ。
 [「世界で約83億個作られているマイクロプロセッサのうち、PCやワークステーションで使われているのはそのうち2%の1.5億個、残りの98%はすべて組み込みに使われる。そのうち、16bit以上のマイコンの60%が、私が作った組み込みOS“ITRON(Industrial TRON)”で動いている」]
  (http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0725/tron.htm)

 確かに普及してはいるのだが、ITRONは標準OSとは呼び難いのである。
 OSとハードが独立していれば、Windows/Linux同様に「標準」と呼べるが、ITRONはそのレベルには達していないからだ。
 設計するエンジニアの立場で見れば、Windows/Linuxとの差はもっとはっきりする。実は、ITRONには互換性がないのである。ITRONと呼ばれていても、バラバラな規格が並存しているのだ。実際、企業間どころか、企業内でもITRONは互換性が乏しいのである。

 どうしてこのような状態になったかといえば、ハードウエア仕様についての規定が無いからである。
 TRONの仕様は全面公開されており、自由な改造を認めている。その上無料だ。従って、ITRON利用者は、選んだハードウエア仕様に合わせて勝手に機能多様化を図る。お蔭で、様々なITRONバージョンができあがってしまう。
 ドライバやミドルウェアは各社各様なのだ。これでは、移植ソフトが問題なく動くことなど期待できない。

 こうなったのは、TRONの「オープン」方針というよりは、日本企業の体質に合わせた結果といえそうだ。
 日本のエレクトロニクス企業は、独自のハードを各社が抱えていた。効率を考えれば、1種のハードに集約するのが自然だが、日本企業は統一を嫌ったのである。
 TRONの無管理状況は、この状況に合わせたといえる。

 TRONベースの開発環境「T-Engine」の動きは、このバラバラ状況を変えようとの試みと見ればよい。発表によれば、カーネル(T-Kernel)を確定するらしいが、ハードウエア規定は行わないようだ。これでは、標準としては不充分な規格しかできない。

 パソコン用OSはこうした規格が明確に設定される。仮想ハードウエアの仕様設定が出発点なのである。それに合わせてOSの仕様を決めることになる。
 従って、互換性が保証できる訳だ。

 一方、ITRONはハードウエア仕様を決めない。ハード側に合わせて仕様を決める仕組みなのだ。そのため、代表的な組込み向けCPU(ARM/MIPS/SuperH/M32R/FR)すべてに対応することになる。要するに、「T-Engine」の活動とは、インターフェースを規定する作業でしかない。
 これでは、互換性は実現しまい。ITRONのIP流通は実質的に無理だと思う。

 ITRONのこれまでのIP資産を生かそうと考えるなら、LinuxかWindowsのようなハード規格がはっきりしている標準OSの支援が不可欠となろう。

 すでに、そうした流れが始まっているようだ。

 最初に動いたのがLinux側(米MontaVista Software)である。
  (http://www.mvista.com/news/2003/t-engine.html)
 当然ながら、Microsoftも動く。
  (http://www.t-engine.org/news/pdf/TEF030925-u01e.pdf)

 いよいよ、Linux/WindowsのリアルタイムOSが入りやすい環境が整備されたのである。

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