---Linux時代の幕開け   

  普及の可能性 3: プロコン代替へ
2003.12.20
 Linuxが浸透し易いのは、先進的なサーバ分野であることを述べた。
  → 「2: 次世代サーバに向けて」

 その観点で考えると、既存コンピュータ代替市場で有望な分野がある。
 生産分野で用いられているプロセスコンピュータの領域だ。日本の大手電機メーカーが圧倒的に強い市場である。

 プロセスコンピュータはベンダー各社の独自仕様である上、個別用途毎の高度な要求に応えるため、特殊なシステム用といえる。当然、高価である。ここでLinuxを使えば、コンピュータ・ハードを汎用品に変えることができるから、システム構築費用が大きく下がる。Linuxが信頼できるなら、システム再構築時に代替が図れる分野である。
 しかも、特殊なシステムなので、社内外のシステム構築/メインテナンス担当者には優秀なシステム技術者が揃っている。Linux化の旗が振られれば、対応できる底力がある。このため、教育費用を支払っても、Linux化でコストメリットを享受できる可能性が高い。

 こうした動きを、この分野の先達、新日本製鉄君津の動きで見てみよう。
 (新日鉄は、プロセスコンピュータをいち早く投入し、日本の鉄鋼業の地位をあっという間に世界のトップに押し上げたことで知られている。システム構築力の水準は極めて高い。この企業の対応を見れば、プロセスコンピュータ代替市場での、Linuxの将来が占えそうだ。)

 君津製鉄所は1968年に操業を開始している。粗鋼から各種鉄鋼製品まで、一貫生産の巨大工場である。ここでは、1999年に新システムが稼動し始めている。
 プロセスコンピュータからのデータを操業系メインフレームに落とす流れと、数十台のデータ収集用ミニプロセスコンピュータ(Windows NT)の流れ、の2つをオンライン処理サーバ(UNIX)に繋く仕組みである。そして、このアウトプットが数百台のパソコン端末に渡る。当然ながら、操業系サーバに管理系サーバが連結することになる。
  (http://www-6.ibm.com/jp/software/data/db2/udb/casestudies/pdf/sinnittetu.pdf)
 様々なハード/OSを統合する、サーバ・クライアント型の大規模システムが稼動している訳だ。

 ここでは、すでに、1997年からビレット連続鋳造設備のシステムにWindows NTを用いている。高価なプロセスコンピュータからの脱却は既存路線なのである。
  (http://www.nsc.co.jp/saiyou/news/cost.html)

 プロセスコンピュータ脱却を、連続鋳造プロセスから始めた理由は、工程の単純性と思われる。コンピュータがダウンしても、すぐに問題回避可能な小規模システムなので、試用に最適と判断したのだろう。OSは、とりあえず使っているWindows NTを選んだといえそうだ。

 各工場の製品品質検査ラインもWindows NTサーバで制御するようになった。プロセスコンピュータ代替が、次々と進んだのである。
  (http://www.oracle.co.jp/showcase/sinkimitsu/case.html)
 おそらく、サーバ構築費用は半分以下、年間メンテナンス費用は7〜8割カットできた筈だ。

 そして、ついに、代替は本丸にまで進んだ。第3高炉の制御にLinuxが使われることになったのである。
  (http://www.mainichi.co.jp/life/money/release/200105/21/20010521p0400e012130000c.html)
 巨額なコスト削減に成功したことになる。

 高炉や熱間圧延といった生産設備は巨大である。その上制御も複雑で、連続鋳造や品質検査とは訳が違う。
 1000個程のセンサーから、毎秒数百にのぼる温度計測データをとり込み、的確な制御指示を出すシステムだ。精密分析装置とほとんど変わらない仕様といえよう。しかも、20年間24時間連続操業を狙うのだから、とてつもない高信頼/耐久性が要求される。

 これ程の高度な要求にも、Linuxは応えることができたのである。
 これで、Linuxは圧倒的優位に立ったといえる。

 というのは、Linuxはソースコードが公開されており、自由に改訂/利用できるからだ。このことは、今後20年間、確実にサポートできる、ということに他ならない。長期に渡って利用しなければならない生産現場では、これ以上のメリットはあるまい。

 従って、Linuxに対応できる専門家さえ揃えば、プロセスコンピュータは、早晩Linuxコンピュータ一色になる可能性が高い。というより、高価なプロセスコンピュータを導入する保守的な企業は消えていく運命にあると言えそうだ。

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