---Linux時代の幕開け   

  普及の可能性 8: 大転換の可能性
2003.12.27
 利用者の現状からLinuxの浸透余地を見てきた。
  → 「2: 次世代サーバに向けて」、 「3: プロコン代替へ」、 「4: 専用システムの登場」、 「5: 小企業の姿勢転換」
    「6: 素人利用は望み薄」、 「7: 簡素なパソコンでの挑戦 」

 この他にも、中堅企業や事業部門のように、取り組みが進んでいるが取り上げなかった市場もあるし、教育や政府といったホットな市場や、面白そうな特殊市場など、探せばチャンスはいくらでも見つかる。しかし、こうした点検を徹底的に行ったからといって、Linuxの将来が読めるとは限らない。

 現実を眺めるだけなら、結論はありふれたものになるからだ。

 おそらく、Windowsの地位はほとんど変わらず、Linuxは商用UNIXと肩を並べる存在感を示すようになる、といったシナリオだ。せいぜい、グリッドコンピュータが入ってくる、といった見方を、彩りとして付け加わる程度だろう。

 経験則では、このような現状外挿型のシナリオは外れることが多い。
 多くの場合、イノベーターが現われ、常識的シナリオを藻屑にしかねない動きが発生するのである。こうした兆しを、市場から読むことが重要なのである。

 と考えてじっくりと市場を眺めると、コンピュータの技術構造の変化のなかに、産業変革を迫る可能性の動きを見つけることができる。
 従って、大転換シナリオも考えておいた方がよいと思う。

 少し考えてみよう。

 コンピュータはアプリケーション・ソフトが無ければタダの箱である。
 今までのパターンでは、アプリケーション・ソフトの開発は、OSに1対1対応で行われる仕組みである。
 ところが、JAVA言語の普及で、この仕組みが崩れ始めた。OSとアプリケーションの間に、「ミドルウエア」や「フレームワーク」が介在し始めたからである。
 そして、「フレームワーク」がしっかりとしたものになり、アプリケーション構築の役割が相対的に小さくなってきた。アプリケーションの構築/転用/移植が簡単になってきたのだ。お蔭で、OSとアプリケーション開発の1対1構造が揺らぎ始めたのである。

 つまり、OSの対決より、「フレームワーク」の対決で将来が決まる時代に入ってきたといえる。

 このため、Microsoftは「Windowsサーバ + .NET Framework」上でアプリケーション開発を進める体制に移行した。この体制で開発するプログラムが、パソコンと連動して機能を発揮する仕組みである。
 これに対抗するのが、Java言語の「J2EEアプリケーションサーバ」の開発の仕組みだ。こちらは、パソコンOS上に仮想マシンをかぶせ、この上でJavaプログラムを働かす。このため、プログラムはOSを選ばない。この構想が本格化してきたのである。そして、これから、DellやHPのWindowsパソコンにはJAVAの仮想マシンが搭載されてくる。
 これで両者の競争が熾烈化するのは間違いない。

 この競争が産業構造を変えるかもしれないのである。
 といっても、JAVAプログラムの威力を注視せよ、と主張している訳ではない。JAVAプログラム開発者が「標準」統合開発ツールを使い始めると、山が動きかねないのである。

 Windowsのユーザでもある開発エンジニアが、他のOSにも対応する「標準」統合開発ツールを使い始め動きがでてきたのである。こうなると、Windowsの地位は不安定化しかねないのである。
 Windows向けアプリケーションを「標準」統合開発ツールで製作すると、その成果物をLinuxやUNIXに転用できる道が開けてくるるからだ。
 もし、開発したプログラムが全OSに対応できるなら、Linux全盛時代が到来しかねないのである。

 もちろん、現段階で、ツールにはそれだけの力は無い。夢のような話しに見える。
 しかし、統合開発ツールが急速に進歩し始めたのである。こうなると、夢とも言えなくなってきたのである。開発効率向上は開発エンジニア全員の願いでもあるから、注力が続けば十分ありえるシナリオなのである。

 このシナリオがあり得るとするなら、魅力的な統合開発ツールを提供して自陣に開発エンジニアを集めた側が優位に立つことになる。

 従って、Microsoftが2002年5月に販売を開始した開発ツール「Visual Studio .NET」は、Windowsを支える戦略商品と見ることもできる。

 これに対抗するIDE(統合開発環境)ツールが、IBMが、2001年11月にオープン・ソース化した「Eclipse」である。4,000万ドル相当の自社開発品らしい。無償だから、IBMにとっては、商品ではないが、戦略的ソフトといえよう。
  (http://www-106.ibm.com/developerworks/linux/library/l-erick.html)

 現在の開発ツールは乱立状態である。どれも帯に短し襷に長しで、開発エンジニアは複数のツールを使っていることが多い。ところが、ついに使い易い統合ツールが登場した。それも無償で入手できる。
 軽快に動き、便利なので、JAVA言語を使う開発者を中心に、利用者数が着実に増加しているようだ。
  (http://www.eclipse.org/)

 このツールは、プログラム言語等にプラグインで対応するように作られている。ここがミソである。
 例えば、Java言語は「JDT(Java Development Tool)」プラグインとして用意されている。もちろんC/C++言語にも対応する。
 このプラグイン部分については、Java言語で勝手に作ることもできる。そのための環境(Plug-in Development Environment)も提供されている。従って、どのような言語にでも対応可能な汎用ツールなのである。
 しかも、プラグイン部分は、商用化(ソース非公開)可能なライセンス条件になっている。このため、ニーズに応えて、ツール・ベンダーが魅力的なプラグインを開発し販売することもできる。
 相反するオープン・ソースとプロプラエタリーという、両者の利点を組み合わせた体制を敷いているのだ。

 そして、ここが一番重要な点だが、Linux上で稼働する「Eclipse」と、Windows上で稼働する「Eclipse」の間に全く障壁がないのである。
 プログラム開発チームは、どのようなOSを対象としていても、「Eclipse」技術に専念さえすれば、プロジェクトを完遂できるのだ。ついに利用OSに関係なく、完璧な協働作業が可能になった訳だ。
 明かに、新時代への一歩を踏み出したといえる。

 「Eclipse」が、標準IDEの地位を獲得すれば、OS地図が塗り変わる可能性がでてきたのだ。

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