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---デジタルメディアの進展   

   ファイル交換ソフトの影響度
2004.4.4
 2004年3月、Felix Oberholzer(Harvard Business School)、Koleman Strumpf(UNC Chapel Hill)の両氏が、ファイル共有ソフトがレコード売上に与える影響についての論文を発表した。(1)

 経済学的な分析では、統計的に売上への影響は無視できるというもの。

 業界は、違法ファイル交換がレコード業界の売上減少を引き起こしたと主張してきたが、そうは言いかねる、との見方が提起された訳だ。

 それでは、何が売上減少に繋がったのか。

 この論文では、先ず、誰でも考えつく理由があげられている。

 ・ 経済全体の不調
 ・ アルバム発行数の減少
 ・ 他のエンタテインメントの勃興

 そして、そもそも、1990年頃の売上との比較は問題があるとの指摘も、よく考えればその通りである。
 LPレコードからCDへの代替による市場膨張が含まれているから、その値と比較しても意味が薄いという訳だ。

 要するに、全体のパイが減っている時に、音楽CDの魅力が薄れたのだ。市場が成熟しているにもかかわらず、旧態依然たるビジネスを行っていれば、売上減少は避けられないのは鉄則である。

 それでは、どうすればよいのか、わかる筈だと思うが、この業界はそうしない。

 なかでも、最大の問題は、ジャンルの減少と言えよう。カスタム化は、成熟社会の基本的要求だが、これに対して棹差す動きが進んでいるのだ。
 特に、米国では、ラジオ局の統合でバラエティが乏しくなっている。
 さらに、大企業は、一斉に儲かる大型プロジェクトに集中している。
 本来は、雑多なニーズに対応できる儲かる仕組み作りに挑戦すべきだが、全く逆に進んでいる訳だ。

 こんなことをしていれば、消費者が音楽産業の姿勢に対して反感を持つようになるのは当然だろう。

 しかし、この論文の趣旨を、違法なファイル交換を容認する主張と同一視すべきではない。
 (著者の問題意識は、社会全体の福祉を目指す著作権法の必要性だと思われる。)

 この分析結果が正しければ、ファイル交換で被害を受けているのは、音楽産業の大企業では無い。
 と言うより、ファイル交換で人気がでれば、儲かる作品の普及をさらに促進させる効果が期待できるから、音楽産業の大企業は、ファイル交換から恩恵を受けてきた可能性が高い。

 おそらく、痛手を被ったのは、もともと収益性が低く、利益を度外視して運営している零細企業の方だろう。
 違法なファイル交換が少し広まっただけで、小さなコミュニティの存立基盤が破壊される可能性があるからだ。
 本来は、ファイル交換ソフトは、バラエティ化の核となるべき小さなコミュニティの活動を支えるようなものでなくては意味が薄いのである。

 要するに、ファイル交換ソフトの技術は今一歩なのである。
 その上、この技術をテコにしたビジネスコンセプトも不出来だといえよう。

 この技術は、本来、マニアに任せておくべきものではないのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.unc.edu/~cigar/papers/FileSharing_March2004.pdf
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