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---「情報革命」神話の見方   

   ITのインパクト論争
2004.5.28
 2003年5月、Harvard Business Review に、Nicholas G. Carr(1)著「IT Doesn't Matter」が掲載され、おおいに論議をよんだ。(2)
 特に、IT業界人はいらだったようだ。話題にしたくもない、といった調子である。
 「Hogwash!」、「Dead wrong」、「IT matters a whole lot.」と語ったのだから、強烈な反感を呼んだのである。

 といっても、それから1年もたったから、そろそろ下火になった、と思っていた。

 ところが、2004年5月6日、NewYorkTimes に、UCBerkeleyのHal R. Varian教授の「How Much Does Information Technology Matter?」が掲載された。
 なかなか面白い論文である。

 ITは、高価な技術で、使うのも難しいから、それ自体の威力はたいしたものではない、とのCarr氏の指摘の正当性は認めるが、その力の本質を見落とすべきではない、と主張したいようだ。

 ITはミクロでは威力がある。先ず、少数の企業がITで競争優位を実現し、高収益を謳歌できるからだ。
 ここで留まるなら、ITの意味は薄い。マクロで見れば、社会には、それほど大きなインパクトを与えていないかもしれないからだ。
 ところが、これをきっかけとして、革新技術を活用した商品が一気に普及すれば、状況は変わる。この点を忘れてはならない、というのである。

 商品の普及が進めば、特別な技術が、極く当たり前の技術になる。そうなれば、特別な企業だけが巨大な利益をあげることはできなくなる。もちろん、ITだけが格段に重要とも言えなくなる。しかし、社会は大きく変わる。

 つまり、ITの重要な役割は、イノベーション創出の端緒をつくること、と見る訳だ。新しい挑戦を生み出し、新市場創出に成功させるきっかけを作ることこそ、ITの価値と考えるのである。

 確かに、T型フォード自動車の組み立てライン運営方法を知ることと、IT活用は同じようなものだ、との説明には説得性がある。

 ITバブルが再度発生することは無いと思うが、世界経済の復調は顕著だから、活発な論議が再開されるかもしれない。

 --- 参照 ---
(1) 同誌元編集長、同名の本がHarvard Business School Pressから出版された。
(2) 論議の経過: http://www.nicholasgcarr.com/articles/matter.html
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